研究課題
半月板損傷に対する切除後欠損に対し欧米では同種半月板移植が行われるが、抗原性残存、力学的強度低下等の課題が残る。我々はこれらの解決手段として高静水圧印加処理を用いて半月板の脱細胞化が可能であることを検証し、その最適条件(30℃,1000MPaで高圧処理を10分間施行後、DNase含有溶液で3日間の核酸除去処理を37℃で実施)による脱細胞化半月板と、同種移植の従来法である凍結融解処理半月板を組織学的、生化学的、生体力学的観点から比較・検証し、さらに脱細胞化半月板への再細胞化について検証した。具体的には、新鮮ブタ膝内側半月板を用いて、脱細胞化半月板と凍結解凍(半月板を-80℃で冷凍後、37℃で2分間温浴し解凍)したものを、未処理群を対照とし、組織学・生化学・生体力学的に解析した。生体適合性は、ブタの背部皮下に脱細胞化半月板および凍結解凍半月板を移植し、移植後3,14,28日で組織を採取し組織学的解析を行った。脱細胞群ではHEおよびDAPI染色像で核を認めず、safranin-o染色像では凍結解凍群、脱細胞群ともに未処理群と比べ染色性が低下した。Picrosirius red染色の染色性に差はなかった。脱細胞群のdsDNA重量は他の2群と比べ有意に約1%に減少した(P<0.05)。脱細胞群のGAG定量は凍結解凍群と同等で、コラーゲンの定量では各群間に差は認めなかった。脱細胞化半月板の圧縮応力は、生理的な圧縮強度に関しては他の2群と比べ差はなかったが、過負荷での圧縮応力および応力緩和に関し、脱細胞群で他の2群より有意に低下した。半月板移植後の炎症細胞数は、脱細胞群は凍結解凍群より少なかった。以上より、脱細胞化半月板のほうが凍結解凍半月板よりも機械的強度に関してわずかに劣るが、免疫学的には優れていることが示された。また、高静水圧印加処理脱細胞化半月板への再細胞化は経時的に認められた。
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Journal of Orthopaedic Research
巻: 37巻11号 ページ: 2466-2475
10.1002/jor.24350.