研究課題
癌の正確な悪性度評価には悪性度の高い細胞を選別して解析する必要がある。末梢循環癌細胞(Circulating Tumor cell; CTC)は浸潤や転移能力が高い、悪性度・生物学的特性を最も反映する集団と考えられいる。現在頭頸部癌においてCTC 定量のために最適なマーカーが確立されていない。29年度は、将来各種の癌に応用可能なCTC 捕捉システム開発の第一段階として頭頸部癌のCTC に焦点を当て、「1) 頭頸部癌CTC 捕捉に適したマーカーの同定と捕捉用チップを開発し、頭頸部癌CTC 捕捉システムを最適化することを目的として抗EpCAM 抗体のコーティング条件と感度、特異度を最適化すべく、条件設定を行った。上咽頭癌細胞株C666-1細胞や舌癌細胞株OSC-19細胞などの細胞株を用いてを健常ドナー末梢血7.5ml に、それぞれの細胞ごとに1 細胞/ml、10 細胞/ml、100 細胞/ml となるように混入し最適化した条件では、1 細胞/mlでも検出可能であった。遠隔転移を有する臨床検体で回収できるCTCは全血5ml当たりで5個以下ながら回収は可能であった。一方で遠隔転移を有しない臨床検体からでは細胞回収が極めて低く、この原因が、真に臨床検体中にCTCが含まれていないのか抗EpCAM 抗体による本回収方法の設定に問題があるのかを30年度検証する必要がある。従来の、GFP 発現増殖型アデノウィルスおよびテロメスキャンによる細胞回収効率よりも抗EpCAM 抗体のコーティングによるCTC捕捉チップの回収効率は低い傾向にあることから、後者の方が原因である可能性が高いと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
29年度は遠隔転移を有する臨床検体で回収できるCTCは全血5ml当たりで5個以下と回収効率は低いものの可能であった。遠隔転移を有しない臨床検体からの細胞回収が極めて低い原因が未解明であるが、初年度に構築したCTC捕捉システムは培養細胞を含むサンプルからは再現性よく細胞を捕捉できることから第一段階はクリアしたと判断した。
上述のごとく、遠隔転移を有する臨床検体で回収できるCTCは全血5ml当たりで5個以下ながら回収は可能であった。一方で遠隔転移を有しない臨床検体からでは細胞回収が極めて低く、この原因が、真に臨床検体中にCTCが含まれていないのか抗EpCAM 抗体による本回収方法の設定に問題があるのかを30年度検証する必要がある。そのために、抗体だけでなく細胞サイズによる分画設定を行い、29年度同様にまずは培養細胞を用いて、次に臨床検体を用いて、抗EpCAM 抗体によるCTCチップ法との比較検討を行い頭頸部癌に最適なCTCチップ開発をめざす。
当該年度で使用予定であったポリマーマイクロチップの実使用量がほぼ半分であったこと、実験にかかる予定の人件費がかからなかったことから当初よりも少ない使用額となった。次年度には臨床検体を用いた解析が中心となり、また、分担者を追加したことで、研究の進行スピードが上がることから、使用予定額を持ち越した分は今年度中にほぼ使用することとなることが見込まれる。
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Pathology International
巻: 67 ページ: 461-466
10.1111/pin.12561