研究課題/領域番号 |
17K19718
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉崎 智一 金沢大学, 医学系, 教授 (70262582)
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研究分担者 |
中西 庸介 金沢大学, 医学系, 助教 (20623648)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 末梢血循環腫瘍細胞 / CTCチップ / 頭頸部癌 / 悪性度 |
研究実績の概要 |
癌のいわゆる悪性度を規定する細胞はその一部であり、正確な悪性度評価には悪性度の高い細胞を選別して解析する必要がある。末梢循環癌細胞(Circulating Tumor cell; CTC)は原発巣癌細胞集団の中でも上皮間葉移行(Epithelial Mesenchymal Transition; EMT)を生じた浸潤や転移能力が高い、悪性度・生物学的特性を最も反映する集団と考えられる。 富山県工業技術センターで開発された抗体とマイクロ流体デバイスとを組み合わせたポリマー性マイクロチップを用いて上咽頭正常上皮細胞株NP69、上咽頭癌細胞株C666-1、舌癌由来OSC19 を用いたセットアップを行なったのち、4名の臨床検体を用いてCTC捕捉を試みた。 当初は抗EpCAM抗体を用いることで臨床検体においてもCTCが捕捉可能と考えていたが極めて回収効率が悪いことが判明した。さらにこのシステムで回収された細胞の量的評価は臨床的な癌悪性度を十分反映しないことが示唆された。一方でpodoplamin抗体をコートしたCTCチップで回収効率が改善することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度のCTC定量システムと治療効果予測に有用な臨床的パラメーターとの関連性を解析を行なった。頭頸部癌全体を対象にCTCの捕捉と臨床病期や腫瘍体積、そして、リンパ節ならびに遠隔転移との関連について検討し、それぞれの方法で捕捉されるCTC量が反映する臨床的意義は直接的に悪性度を反映すると予測していた。すなわち、EpCAM抗体を用いることで臨床検体においてもCTCが捕捉可能と考えていたが極めて回収効率が悪いことが判明した。 CTCチップにコートする抗体を各種EMT関連抗体に変更し、podoplamin抗体で回収効率が改善することが判明した。したがって2019年度はこの条件においてc研究を加速することができると考えられる。また、CTC捕捉システムについても改良が進んでいるため、さらにCTC研究を加速することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者である富山工業センター大永博士と相談の上、上皮系細胞が血球系細胞よりも大きいことを指標とした物理的細胞のサイズに基づくソーティングによるCTCを試み、CTC回収の最効率化を図る。さらに、抗EpCAM抗体に加えEMTマーカー抗体カクテル(抗Vimentin, Fibronectin, N-cadherin抗体)癌幹細胞マーカー候補(抗CD44v, CD133, CD271抗体)、さらに上咽頭癌ではEpstein-Barr ウイルス膜蛋白LMP1に対する抗体でコートしたチップ、を用いてそれぞれのチップにより捕捉される細胞を定量し、EMTが生じているCTC定量のための条件設定をさらにチューンアップする。 次にそれぞれの抗体で捕捉されるCTCの生物学的特性、質的な評価を目的として、抗癌剤感受性や遺伝子発現解析を行う。 まず抗EpCAM抗体、EMTマーカー抗体カクテル、癌幹細胞マーカー候補抗体、および抗LMP1抗体チップを用いて捕捉したCTCをin vitroコラーゲンゲル上で三次元培養を行う。 ついでシスプラチン、ドセタキセル、5FUに加え、セツキシマブ、抗PD-1抗体に対する感受性についてCTC由来患者の原発巣の反応と比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に関する指導を受ける際に謝金を見込んでいたが必要をしなくなったためで、次年度に指導を受ける際に使用予定である。
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