研究課題/領域番号 |
17K19721
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
近藤 峰生 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80303642)
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研究分担者 |
杉本 昌彦 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00422874)
生杉 謙吾 三重大学, 医学系研究科, 講師 (10335135)
松原 央 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20378409)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 網膜電図 / ウサギ / トランスジェニック / 細胞起源 / 網膜色素変性 / a波 |
研究実績の概要 |
本実験では、生後2 年以上経過している正常ウサギおよびTg ウサギが15 匹ずつ必要である。そこで本年度は、Tgウサギと確認されたウサギを長期間飼育して、生後2年のTgウサギの準備を行った。同時に同じNZW系統の正常なウサギも同じ年齢のものを15匹準備した。これについては、現在もまだ飼育中である。Tgウサギであることの最終確認は、遺伝子検査および生後6か月におけるERG記録により杆体応答が有意に減弱していることにより行った。 また、本年度では正常なウサギを用いて、基本的なERGの刺激条件の設定と実験状態の確認を行った。刺激には網膜全体を均等に光刺激することができるGanzfeld 刺激装置を用いた。まず正常およびTg ウサギから、30-50 cd-s/m2 程度の強力なフラッシュ光刺激を用いて、ERG のa 波を記録するようにした。刺激の強さによってERG の細胞起源が異なる可能性も考慮し、念のためにneutral density filter を用いて0.5 log 間隔で刺激強度を変化できるようにした。ノイズの少ないa 波の曲線が得られるまで、10-20 回の加算平均を行った。続いて、Tg ウサギにおいて杆体の活動を十分抑制できると考えられている30 cd/m2 程度の背景光を点灯させ、同じ光刺激でERG のa 波を記録して、背景光(+)と(-)でほとんどa 波の波形と振幅が変化しないことを証明した。これは、生後2 年を過ぎたTg ウサギにおいては、そのERG が全て錐体系細胞由来であることを示しておくために重要な基礎実験となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展していると考えられる。本年度では、特にERG実験の基本的な実験状況を正常ウサギで十分に確認できたことが成果といえる。我々は、以前に我々のTg ウサギを用いて比較的早期の視細胞変性期におけるERG のa 波の起源を薬理学的に研究し、その結果、変性が進むにつれてa 波の振幅全体における錐体視細胞の割合は正常より明らかに小さくなり、逆にOFF 型錐体視細胞の関与が徐々に大きくなっていることを見出した(Hirota, Kondo, et al. IOVS 2012)。しかし、この時点では、視細胞が変性するにつれてOFF 型双極細胞の関与が大きくなると結論したのみであり、さらに進行した、変性末期の網膜におけるa 波の関与については全く調べていなかった。今回の刺激条件の設定の後に、変性がかなり進行した2年のTgウサギからのERG実験に進むことにより、我々の仮説「網膜色素変性の末期患者のERG のa 波の起源が視細胞ではなく、大部分が3 次ニューロンである」を実証することが可能であると考えられる。以上の理由により、全体的に順調に研究は進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、前年度のERG をtetrodotoxin (TTX)とN-methyl-D-aspartic acid (NMDA)を作用させた後に記録する。TTX とNMDA を同時に硝子体内に注射すると網膜の3 次ニューロン(アマクリン細胞および網膜神経節細胞)はほぼ完全に遮断されることが知られている。TTX+NMDA を作用させたあとに、進行した変性Tg ウサギのERG のa 波がどの程度低下するかをa-wave fitting で計算する。もしこの段階で加算平均を行ってもa 波が検出できない程度に減弱していれば、進行した視細胞変性の網膜から記録したERG のa 波はほぼ全て3 次ニューロンであることになる。TTX+NMDA を注射後に記録したERG にa 波がわずかでも残存していた場合には、続いてAMPA/KA型受容体のantagonist である6-cyano-7-nitroquinoxaline-2,3-dione disodium salt hydrate(CNQX)を作用させる。CNQX は錐体視細胞から錐体OFF 型双極細胞への神経伝達活動を遮断することから、注射前後の波形の変化を観察することによってa 波に占める錐体OFF 型双極細胞の関与の割合を知ることができる。もしもこの段階で初めてa 波が消失していれば、進行した視細胞変性の網膜から記録したERG のa 波は2 次ニューロンと3 次ニューロン由来であることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)ERGの実験において、使用するウサギの必要数が当初の計画よりも少なく済んだため。 (使用計画)H30年度に行うERGと薬理学実験に使用する予定である。
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