研究課題
末梢神経障害の治療ターゲットとしてシュワン細胞に着目し、抗がん剤によるあるいは糖尿病性の末梢神経障害におけるシュワン細胞の役割と、シュワン細胞を標的とした治療薬探索を実施した。既にシュワン細胞に対する分化誘導能を有することを見出していたホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬シロスタゾールあるいはタダラフィルについて、抗がん剤誘発末梢神経障害(CIPN)に対する作用を検討したところ、CIPNの各症状や所見(機械過敏応答、冷過敏応答、電流知覚閾値の低下、神経伝導速度低下、髄鞘障害等)はいずれも有意に抑制され、CIPNに対して予防効果を示すことを明らかにした。また、京都大学が保有する約3000種類の既承認医薬品あるいは新規化合物を含む化合物ライブラリーから、MBP発現誘導能およびシュワン細胞に対する細胞傷害性を指標にスクリーニングしたところ、高いシュワン細胞分化誘導能を示し、かつ、細胞傷害性を示さない化合物を複数得ることに成功した。これら化合物のシュワン細胞に対する作用(分化誘導能、濃度依存性、細胞傷害性等)を、初代培養シュワン細胞にて確認するとともに、それら候補化合物が本来有している薬理作用との兼ね合いも考慮し、候補化合物の絞り込みを行った。多くの化合物はPDE阻害作用を有するものであったが、それ以外の候補化合物も含まれており、最終的に現時点で候補と考えている化合物を選択した。また、本研究過程で、脱分化シュワン細胞で発現が増加、培地中に遊離されるガレクチン3がマウス血中でも上昇することを見出し、さらに、ガレクチン3遺伝子欠損マウスを用いた検討から、シュワン細胞から遊離されたガレクチン3がマクロファージを誘引し、CIPN発症の原因となっていることを明らかにした。
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