研究課題/領域番号 |
17K19725
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸口田 淳也 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (40273502)
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研究分担者 |
吉富 啓之 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (50402920)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 骨芽細胞 / 骨細胞 / 破骨細胞 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
本研究は同一ゲノム情報を有する、異なる種類の細胞を得ることが出来るという多能性幹細胞の利点を活用して、申請者が独自に開発した骨分化誘導法を用いて、骨芽細胞及び骨細胞を誘導し骨基質を形成させ、更に前破骨細胞及び破骨細胞を同一のiPS細胞から誘導し、これらを共培養することで、3次元構造を有する骨オルガノイドを創成し、in vitroで骨リモデリング過程を再現することを目的とする。平成29年度は下記の成果を得た。 1.蛍光標識ヒトiPS細胞の作成:まず骨芽細胞と骨細胞を標識するために、前者ではBSP遺伝子、後者ではDMP1及びSOST遺伝子の3’側に、CRISPR/Cas9システムを用いて蛍光色素遺伝子をGFP遺伝子で標識されたiPS細胞に対して挿入した。現在iPS細胞からそれぞれの分化段階に誘導して、遺伝子発現と蛍光マーカーの発現が一致するクローンの同定を進めている。 2.ヒトiPS細胞からの破骨細胞の誘導と機能解析:既報(Yamaguchi et al. PLoS One, 2013)に準じた方法を用いて、ヒトiPS細胞からTRAP陽性細胞を誘導することに成功した。現在、破骨細胞である実証を得るために、機能評価実験を計画中である。 3.ヒトiPS細胞からの骨オルガノイド作製:iPS細胞の段階から10日間培養後、細胞と基質を重層化した組織として回収し、遺伝子発現解析、組織学的解析(光顕及び電顕)、免疫組織化学染色で骨基質を確認し、骨芽細胞と骨細胞が混在していることを確認した。更にGFP標識iPS細胞とタイムラプス解析を用いて、骨様結節の形成過程を可視化することに成功し、結節表面を覆う骨芽細胞のシートから、骨細胞が結節内に移動する過程が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.蛍光標識ヒトiPS細胞の作成:骨芽細胞及び骨細胞の標識に関して、目的とする遺伝子改変細胞の作製までは順調に進んでいる。破骨細胞に関しては、今後標的遺伝子の選定から組換え遺伝子の作製に進む予定である。 2.ヒトiPS細胞からの破骨細胞の誘導と機能解析:基盤となる誘導法は確立できたので、この項目に関しても順調に進んでいる。今後は機能解析から破骨細胞としての実証を進める。 3.ヒトiPS細胞からの骨オルガノイド作製:GFP標識iPS細胞とタイムラプス解析を用いて、骨様結節の形成過程を可視化することに成功したことは、骨芽細胞から骨細胞への分化過程の理解において大きな進歩であり、骨オルガノイド作製法の確立に向けて、本項目も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.蛍光標識ヒトiPS細胞の作製:計画した標識遺伝子の目的部位に蛍光色素遺伝子が挿入されていることを確認したが、クローンによっては、内在性遺伝子の発現と蛍光が一致しない場合があることから、至適なクローンを選択する作業を進めている。 2.ヒトiPS細胞からの破骨細胞の誘導と機能解析:破骨細胞としての機能解析に加えて、骨芽細胞等との共培養実験のためには、常に一定数の破骨細胞を供給することが必要であることから、より高効率な誘導法の検討を進める。 3.ヒトiPS細胞からの骨オルガノイド作製:骨様結節の形成過程をより詳細に解析するために、1で作製した標識iPS細胞を用いて、骨芽細胞から骨細胞への分化する過程を可視化するとともに、遺伝子発現解析等により、分化の分子機構を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を必要とする消耗品の供給が、研究費使用が可能な年度内に困難であったため、購入を平成30年4月以降に延期し、そのための該当費用を平成30年度分として請求した。
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