研究課題/領域番号 |
17K19727
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
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研究分担者 |
大月 孝志 岡山大学, 保健学研究科, 非常勤研究員 (10534802)
臼井 真一 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (50346417)
稲垣 純子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (90271056)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子 |
研究実績の概要 |
変形性関節症は整形外科領域では最も頻度の高い疾患であり、我が国の潜在的な患者速く3300万人と推定されているが、適切な早期診断法がない。近年、がんの診断分野において「リキッド・バイオプシー」が注目されている。リキッド・バイオプシーは少量の血液や尿などで実施できるため(1)低侵襲 (2)早期診断 (3)ゲノム解析による治療薬選択 など多くの利点が報告されており世界中の研究機関や医療機器メーカーが開発に乗り出している。しかし骨・関節領域でのリキッドバイオプシーは我々の知る限り臨床応用例がない。果たして、変形性関節症のリキッドバイオプシーは実現できるのであろうか?この命題に答えを出すために、本研究では変形性関節症へのリキッドバイオプシーに挑戦することを計画した。 まず、ラットに膝関節の前十字靭帯及び内側側副靭帯を切離し、内側半月板を切除した変形性関節症手術モデルを作成した。変形性関節症手術の施行前および作成10日後、2週間後、4週間後、6週間後にそれぞれ関節液および末梢血液の採取を行った。得られた関節液および血漿成分からエクソソームを含む小胞成分を精製した。小胞成分の粒子径を測定したところエクソソームが含まれていることが確認された。次にエクソソーム中に含まれているRNA成分を定量した。関節液はスタート時の採取量が少ないこともあって微量のRNAしか検出できなかったのに対し、血液中のエクソソームに含まれるRNAは一定量存在することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液中に含まれている分泌された小胞内にエクソソームが存在していることが確認され、リキッドバイオプシーに利用できる可能性が示唆された。現在、エクソソーム内に含まれているRNAを網羅的に解析する準備を進めている。一方で関節液は手術後早期にラット膝関節から得られる量が当初想定していたよりも少なく関節内腔へ、リン酸緩衝液を注入して洗い出す方法など試みたが生体内に吸収される成分が多く回収量は増えないことが明らかとなった。これら初年度に得られた結果より、本実験系では血液に比べて関節液を用いる方法ではエクソソームの回収量が少なく直接的な比較ができないと結論づけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ラット血液中に含まれるエクソソームを使ってリキッドバイオプシーができるかに挑むのが当初の目的であるので、回収できたエクソソーム内に変形性関節症に特異的なmicroRNAなどが含まれているかを探索することが最大の目標である。そのために、エクソソーム内に含まれるRNAを望来的に解析する方法をとる必要があると考えている。コントロールとして正常ラットもしくはシャム手術施行ラットの血液から回収したエクソソーム内に含まれるmicroRNAと比較することを予定している。発現量が微量な為に次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を行うことを計画している。 そもそも本研究では、ヒト変形性関節症での早期診断にリキッドバイオプシーで実現可能かどうかを目的としているために、関節液が大量に存在する進行期の変形性関節症を対象としていない。これらの点も鑑みて、関節液と血液での直接比較よりも血液単独での解析を順次進め、候補となるRNA配列が抽出された段階で関節での発現を検討する方針を選択することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験実施にあたっては消耗品を節約することで使用額を抑えることができた。 また、次年度に次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を予定しており、解析費用が高額になることが予測されたために次年度使用額へと移すこととした。
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