研究課題/領域番号 |
17K19728
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
今井 祐記 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (10423873)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / Zscan10 / DNase-seq / RNA-seq |
研究実績の概要 |
我々は、ゲノムワイドなクロマチン構造変換情報解析から、破骨細胞分化における新規転写因子としてZscan10 (zinc finger and SCAN domain containing 10)を同定してきた(JBMR 2014)。Zscan10は、多能性幹細胞の未分化性やゲノム安定性の維持に関与することが報告されているものの、その分子機能にはまだ議論の余地があり、他の細胞種における役割については全く不明である。今回、我々はZscan10による破骨細胞分化制御機構の解明を目的とし、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集によりZscan10をノックアウトしたRAW264細胞 (KO細胞)を樹立し、その機能について解析した。コントロール(Ctrl細胞)およびKO細胞に対し、RANKL刺激による分化誘導後、TRAP活性の測定、qPCRにより経時的な分化マーカー及び分化抑制因子のmRNA発現量の測定を行った。その結果、Ctrl細胞と比較してKO細胞ではTRAP活性及び分化マーカーの発現量は上昇し、Irf8をはじめとした分化抑制因子の発現量は分化誘導前から減少していた。さらにZscan10を過剰発現によりKO細胞のTRAP活性がCtrl細胞と同程度にまで抑制することが確認できた。このことからKO細胞では、RANKL刺激による分化誘導前の遺伝子発現プロファイルが、破骨細胞分化促進に寄与していると考えられたため、RNA-seqにより網羅的遺伝子発現解析を実施した。その結果、Ctrl細胞と比較してKO細胞では147遺伝子の発現量が1/2以下に減少、83遺伝子の発現量が2倍以上に増加していた。発現低下した遺伝子には、破骨細胞分化抑制因子が複数含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した通り、ゲノム編集によるZscan10ノックアウトRAW264細胞を樹立することができたため。また、この細胞による破骨細胞分化異常を捉えること、ならびにRNA-seqによるゲノムワイド解析を実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた成果から、RNA-seqにおけるゲノムワイド情報を統合的に解析し、Zscan10による破骨細胞分化過程における標的遺伝子を同定する。また、Zscan10の全身KOマウスは出生後致死のため、生体におけるZscan10の機能を解析するためには、Cre/loxPシステムを用い、破骨細胞特異的Zscan10 KOマウスを作出する必要がある。破骨細胞特異的Cre発現(RANK-Cre)マウスとZscan10 floxマウス(共に導入済み)との交配によって、破骨細胞特異的にZscan10遺伝子が欠損したマウス(Zscan10flox/flox;RANK-Cre)を作出し、同腹のZscan10+/+;RANK-Creを比較対象とし、8週齢において骨表現型の解析を進める。表現型の解析はマイクロCTによる骨密度・骨構造解析、骨形態計測による定量的評価、Zscan10の免疫染色等を行い、生体における骨組織の恒常性維持におけるZscan10の役割を明らかにする。同時に、骨髄細胞由来初代培養を用いたM-CSF及びRANKL誘導による破骨細胞分化の解析も遂行する。RANKL投与6日目における破骨細胞形成を、TRAP染色を用いて定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗によりゲノムワイド統合的解析が可能となったため、次年度に実施可能な実験の結果と合わせて実施することが、研究遂行ならび経済的な効率が良いため。
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