ゲノムワイドなクロマチン構造変換情報解析から、破骨細胞分化における新規転写因子としてZinc finger and SCAN domain containing 10(Zscan10)を同定してきた(Inoue K et al. JBMR 2014)が、Zscan10役割は大部分が不明である。我々はCRISPR/Cas9によりZscan10を欠損させたRAW264細胞 (KO細胞)を樹立し、その機能について解析した。 分化誘導後のKO細胞ではCtrl細胞と比較して破骨細胞分化の促進が認められた。KO細胞では分化誘導前の遺伝子発現プロファイルの変化が破骨細胞分化促進に寄与していると考えられた。そこで、RNA-seqにより分化誘導前のKO細胞の網羅的遺伝子発現解析を実施した。その結果、Ctrl細胞と比較してKO細胞では173遺伝子の発現量が1/2以下に減少、87遺伝子の発現量が2倍以上に増加していた。これらの遺伝子群のGene ontology解析を実施した結果、減少した遺伝子群は免疫系システムに関与している遺伝子が多く含まれていた。そこで、RNA-seqデータに加え、Zscan10結合塩基配列モチーフのゲノムワイド情報およびRAW細胞のクロマチン構造変換を解析したDNase-seqデータを組み合わせ、統合的なゲノムワイド解析を行った。その結果、Zscan10が直接転写制御する遺伝子としてHaptoglobin (Hp)を同定した。さらにリコンビナントHpをKO細胞および骨髄細胞由来初代培養破骨細胞に添加し解析した結果、破骨細胞分化が抑制された。これまでの結果から、Zscan10はHpの転写を直接的に制御することで、破骨細胞分化を負に制御していることが、Zscan10 KO細胞における分化促進の一因であることが明らかとなった。
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