研究実績の概要 |
平成30年度は,脱細胞化骨格を用いた子宮再生・再建の基盤データ・技術をヒトおよびカニクイザルに応用すべく,滋賀医科大学動物生命科学研究センターを霊長類実験の実施場所として選定・決定し,施設基準を満たし且つ実験実施に必要な実験体制と実験チームを整えた.その基盤となる知見とデータをさらに確固にするため,前年度より引き続いて,ラットを用いて子宮内膜を子宮内膜脱細胞化骨格(DES)で全置換する方法の技術的検討を行った.その検討のなかで,DESの構造極性が再生される子宮組織の構造に反映されることが判明した.すなわち,正しいオリエンテーションでDESを用いないと,再生・再建される子宮が高率に異常構造を呈した(Miki, et al., 2019).一方, DESによる再生子宮の内膜癒着を防止するためシリコンチューブや癒着防止剤などを用いて様々な検討を行った結果,内膜癒着を来さない処理ラットも得られるようになったが,高い率で再現できるまでには至っていない(三木,他,2017).その理由として,DESのみでは周囲の組織からの再細胞化が不十分であることが考えられたため,DESに子宮構成細胞に分化し得る細胞を予め搭載して再細胞化を効率良く行う戦略を考案した.将来のヒトへの臨床応用を鑑み,その候補としてヒトiPS細胞を用いて検討した結果,胚様体形成とWNT/CTNNB1経路の活性化を通じてヒトiPS細胞をプロゲステロン応答性の子宮内膜間質細胞へ分化誘導する方法を共同研究により世界に先駆けて確立した(Miyazaki, et al., 2018).
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