研究課題/領域番号 |
17K19734
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荒木 慶彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (70250933)
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研究分担者 |
吉武 洋 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00396574)
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 性差 / 多形核白血球 / ラット / 多形核白血球枯渇化抗体 |
研究実績の概要 |
胎生という特殊な生殖戦略をもつ哺乳動物では、種に応じた一定の胎生期間を経て陣痛が発来し、子宮筋収縮により児は娩出される。この陣痛発来の機序には未だ不明の点が多い。現在提唱されている陣痛発来に関する仮説はいずれも子宮収縮機序の一部を説明するに留まっている。一方、子宮内感染により子宮収縮が惹起され、早産を引き起こす事は以前から良く知られている。その際、胎盤や脱落膜から種々の炎症性サイトカインが産生され、臍帯血中および母体血中でその値が上昇し、子宮筋層や頸部への多形核白血球(PMN)の遊走活性化が促進される。この様に、子宮内感染により引き起こされる子宮収縮には免疫学的機構が誘因となる事は様々な知見により明らかとなっている 。 しかしながら、近年、正常妊娠ラットにおいて陣痛発来に先駆けて末梢血PMN陣痛発来においてもPMNの局所浸潤がその誘因である可能性が示されている。 これまでラットにおいては、モノクローナル抗体RP-3を用いた選択的PMN枯渇化モデルが確立されており、このモデル動物を用いてin vivoにおける様々なPMNの機能が明らかにされている。 そこで我々はRP-3を用いて正常妊娠末期におけるPMNの生理機能と分娩の関係を解明することを目的とし、その予備実験としてPMN枯渇化妊娠ラットモデルの作製中、偶然この抗体の生物学的作用が雌雄で異なることを発見した。 本研究ではこのRP3抗体の雌雄PMNの反応性(或いは生物学的反応)の違いに着目して。細胞レベルでの性差について多角的に検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き以下の実験の詳細を検討した。 1)RP-3のPMN枯渇化能の検討:雄ラットはほぼ完全にPMNを枯渇化できるのに対した。また雄LEラットにおいても同様の結果を得た。雌ラットではRP-3は雄とは明らかに異なり枯渇化能は不完全でることを確認した。 2)前年度のFACS解析を用いたRP-3のPMNに対する反応性の検討によれば雄では、PMNはRP-3に強く反応する細胞群(RP-3+)が殆どであるのに対し、雌ではこの細胞群に加えRP-3弱陽性群(RP-3low)が検出された。しかしPMNにおいてはその細胞膜表面の変化はリンパ球などに比べかなり時間的変化が大きく、この測定的誤差を修正するための工夫が必要であることが明らかになった。 3) 各種マーカー分子によるRP-3 lowのPMNサブタイプであることの証明:RP-3と各種PMN発現マーカー分子(CD11b, ミエロペルオキシダーゼ)との共染色、及び他の白血球マーカー(CD3;CD45RA; Rat MHC Class II RT1B: 単球 など)の共染色による検討は上記2)の状況から再現性の検討を含め現在慎重にその解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
PMNの膜表面上の変化を正確にモニターする適切な固定法等の選択が今後の大きな課題である。その上でRP-3のPMNに対する反応性の性差を多方面から解析する。 PMNのマーカーとしてはRP-3に加えRP-1と名付けられた抗体は応募代表者が以前所属した研究室で開発されたユニークなラットPMN活性化マーカーで、末梢血中のPMNには殆ど発現しておらず各種刺激により急速にPMN表面に発現してくる抗原を認識している。RP-3と既にPMNの幼弱マーカー(CD10, CD15; 熱傷などの後に急速に骨髄から動員されるPMNに発現される)として知られているこれらのマーカー及びRP-1との組み合わせは、RP-3の発現が変化しているPMNの性格、特に妊娠後期におけるPMNの動態を全く新しい角度からモニター出来る可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は計画進捗状況は計画通りだったが、本年度は研究を発展させるための基礎データに新しい問題点が出たためにその修正等に予想以上に時間を要した。また研究代表者の一時的な健康上理由及び動物実験施設更新工事のため一時期実験が行えず研究の進捗が遅れた。 繰り越した次年度は当初の予定どおりに執行する。
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