研究課題
生殖戦略として哺乳動物は胎生という特殊な方法を採る。そのために哺乳類では種に応じた一定の胎生期間を経て陣痛が発来(周期的な子宮筋収縮)により分娩にいたる。しかし、この陣痛発来の機序には未だ不明の点が多い。現在提唱されている陣痛発来に関する仮説はいずれも子宮収縮機序の一部を説明するに留まっている。一方、子宮内感染により子宮収縮が惹起され、早産を引き起こす事は以前から良く知られている。その際、胎盤や脱落膜から種々の炎症性サイトカインが産生され、臍帯血中および母体血中でその値が上昇し、子宮筋層や頸部への多形核白血球(PMN)の遊走活性化が促進される。この様に、子宮内感染により引き起こされる子宮収縮には免疫学的機構が誘因となる事は様々な知見により明らかとなっている 。しかしながら、近年、正常妊娠ラットにおいて陣痛発来に先駆けて末梢血PMN陣痛発来においてもPMNの局所浸潤がその誘因である可能性が示されている。これまでラットにおいては、モノクローナル抗体RP-3を用いた選択的PMN枯渇化モデルが確立されており、このモデル動物を用いてin vivoにおける様々なPMNの機能が明らかにされている。まずRP-3を用いて正常妊娠末期におけるPMNの生理機能と分娩の関係を解明することを目的とし、その予備実験としてPMN枯渇化妊娠ラットモデルの作製中、偶然この抗体の生物学的作用が雌雄で異なることを発見した。本研究ではこのRP3抗体の雌雄PMNの反応性(或いは生物学的反応)の違いに着目して、細胞レベルでの性差について多角的に検討した。
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