我々は昨年度、破骨細胞が病態に大きく関わる疾患の一つである関節炎の治療に、siRNAを用いることはできないかと模索し、その過程で、siRNAの安定化を目指した人工化合物を用いてsiRNAを顕著に安定化する方法を見出し、論文投稿した。昨年度中に論文の採択が決定しなかったため、当初の研究計画終了年度は2020年度であったが、2021年度まで研究期間を延長した。 延長した本年度は、論文を投稿した際に、我々が用いたカチオン性siRNA安定化化合物の細胞毒性の有無について、査読者から追加実験を要求されたので、この点について実験を行い、我々の化合物が細胞毒性を示さないことを明らかにした。さらに、査読者から修正や、加筆を要求された部分を変更し、論文を再投稿し、論文が受諾された。 この研究結果は、我々の目的とするsiRNAの関節炎への応用に向けた礎となるものである。また、当初申請していた研究計画の研究対象は破骨細胞に限定したものであったが、我々が発表した論文は、より普遍的にsiRNAを安定化することが可能であり、骨疾患のみならず、種々の疾患に適用するといった、幅広い核酸医薬品開発への応用が期待できる。このような研究成果は、本助成金の申請時には全く予想していなかったことであった。一方、本助成期間内には、実際にsiRNAをin vivoの動物モデル実験に適用できずに終わり、今後の研究課題として残った。 次に、当初の研究計画で我々が仮定していた、破骨細胞と同様に細胞融合を起こす細胞系において、我々が見出した破骨細胞融合機構と同様の機構が働いているのではないかという仮説を実証することはできなかった。このことから、破骨細胞は独自の細胞融合システムを有している可能性が高いと考えられる。
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