研究課題/領域番号 |
17K19748
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
照沼 美穂 新潟大学, 歯学系, 教授 (50615739)
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研究分担者 |
山崎 学 新潟大学, 歯学系, 助教 (10547516)
三上 剛和 新潟大学, 医学系, 准教授 (80434075)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / GABAB受容体 / AMPキナーゼ |
研究実績の概要 |
細胞のエネルギーセンサーとして知られるAMPキナーゼ(AMPK)は、癌細胞では活性や発現が抑制されているが、薬剤などで活性を上昇させると癌細胞の増殖が停滞することが判明している。一方、脳内の抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)が作用するGABAB受容体は、最近、神経細胞のみならず、様々な癌細胞にも発現していることが報告された。 GABAB受容体は脳細胞においては、R1サブユニットとR2サブユニットのヘテロ二量体で機能する受容体である。そこで29年度は、研究室で所有する4種類の口腔扁平上皮癌において、GABAB受容体の発現と細胞内局在を確認しすることから始めた。4種類全てにおいてGABAB受容体の両サブユニットの発現が確認されたが、これまで脳細胞において確認されていた細胞内局在とは異なる結果が得られた。さらに分子量においても違いが見られたため、核、細胞質、細胞膜の各細胞分画を精製し、免疫沈降法を用いてヘテロ二量体の存在の有無と分子量を確認した。4種類の細胞の中で特にGABAB受容体の発現が高かった細胞を選び、GABAB受容体の抗がん効果を検討した。現在までに低濃度においてのみ検討しているが、明らかな効果は確認されていない。今後濃度や時間を変化させながら解析を進めていく予定である。 神経細胞では、AMPKはGABAB受容体と結合して受容体をリン酸化し、GABAB受容体の細胞膜での発現を安定化している。そのため、AMPKを活性化させようと、低酸素刺激を行った。1時間の刺激によりAMPKの活性が上昇することが確認できたため、現在GABAB受容体のリン酸化とAMPK/GABAB受容体複合体の変化について解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、研究計画の流れに沿って実施されている。神経細胞のGABAB受容体と口腔扁平上皮癌のGABAB受容体とでは、タンパク質レベルでの大きな違いが確認されたことから、当初の予定にはない解析を行っている。その解析に時間がかかっているが、GABAB受容体とAMPKのクロストークについての研究成果が発表できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GABAB受容体の活性化シグナルがAMPKの活性を増強させ、より抗がん効果を発揮するかどうか、さらにはがん細胞に起こるAMPKの発現減少をGABAB受容体が回復できるかについて検討を行う。その際、GABAB受容体の活性化によって発現が変化する分子を同定し、新規の抗がん効果発揮経路を見出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の引越しを平成30年度に行うことになったために、機器類の購入を見合わせた。今年度購入する予定である。
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