平成29年度に樹立したCol2a1-Venus-Tgマウスから初代培養皮膚線維芽細胞を採取し、皮膚線維芽細胞から軟骨細胞分化へのダイレクトリプログラミング効率を評価するアッセイシステムを樹立した。Col2a1-Venus-Tg皮膚線維芽細胞に複数の転写因子の組合せをレンチウィルスを用いて遺伝子導入し、Venus遺伝子の発現すなわち緑色蛍光と、RT-qPCRによる軟骨細胞分化マーカー遺伝子の発現を指標に選別を行った。軟骨細胞に発現の高かった転写因子群を様々な組み合わせで遺伝子導入しスクリーニングを行った結果、Sox9、Jdp2、Foxc1およびKlf2の4転写因子の組合せによって、緑色蛍光陽性の細胞が出現することを確認した。FACS解析によりその細胞比率を計測したところ、遺伝子導入された細胞の約5%がVenus遺伝子発現陽性であることが明らかとなった。また、皮膚線維芽細胞におけるCol2a1の遺伝子発現誘導は、軟骨細胞分化のマスター遺伝子であるSox9とその共役因子Sox5およびSox6を遺伝子導入しても認められず、4つの転写因子がすべて遺伝子導入されたときにのみ認められた。4つの転写因子を導入することにより、Col2a1およびアグリカンなどの軟骨細胞分化マーカーが著明に増加したが、一つでも欠けるとその発現は誘導されなかった。さらに、4つの転写因子によるCol2a1およびアグリカン遺伝子の発現誘導は、ヒト由来皮膚線維芽細胞においても観察された。本研究結果は、軟骨組織の再生医療分野のみならず軟骨疾患モデルおよび創薬研究など、将来の革新的医療を担う新しい技術へと研究を発展させることが可能であり、その波及効果は非常に高いと考えられる。
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