研究課題
化膿レンサ球菌はヒトを宿主として主に上気道や皮膚に局所性化膿性疾患を起こす.その続発症として急性糸球体腎炎やリウマチ熱を惹起する場合があり,発展途上国では主な死因になっている.さらに,敗血症や壊死性筋膜炎を伴う劇症型レンサ球菌感染症を惹起し,その致死率は約30%を超える.使用可能であるワクチンは存在せず,予防法と治療法の開発が望まれている.化膿レンサ球菌の線毛は一種のメジャーサブユニットと一~二種のマイナーサブユニットがトランスペプチダーゼの作用によりイソペプチド結合で連結され,最終的に細胞壁に架橋される.化膿レンサ球菌の分類に用いられるT型別を担う抗原はトリプシン耐性抗原と呼ばれ,線毛メジャーサブユニットが主な抗原であることが明らかになっている.したがって,化膿レンサ球菌は血清型依存性に多様な線毛を産生する.本研究では,血清型T3型の菌株が産生する線毛の発現機構と機能の解析を行う過程で示唆されたメジャーサブユニットの分子間静電的相互作用について解析を行った.静電的相互作用を担うアミノ酸残基をアラニン残基に変異させた菌株で認められたメジャーサブユニットの重合度の変化を詳細に検討するため,複数の菌株で同様の変異を染色体DNAに導入し,細胞壁画分における線毛発現をウェスタンブロット法で確認した.その結果,全ての菌株で同様に重合度の変化がみとめられたため,メジャーサブユニットの分子間相互作用が線毛重合過程に影響を与えることが示唆された.また,培養皮膚角化細胞への菌体付着能とバイオフィルム形成能に及ぼす影響について検討した結果,菌株依存的に変化が認められたため,メジャーサブユニットの分子間静電的相互作用は宿主との相互作用とバイオフォイルム形成能に影響を及ぼす可能性が考えられた.
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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