研究課題/領域番号 |
17K19757
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20112063)
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研究分担者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
星島 光博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (30736567)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30322233)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 軟骨 / ニュートリゲノミクス / 糖質 / 解糖系 / アミノ酸 / セロトニン / 成長板 / 関節軟骨 |
研究実績の概要 |
1)ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8をグルコース飢餓状態で培養すると軟骨代謝に重要な役割を演ずるCCNファミリータンパク質の1つCCN3/Novの遺伝子発現は顕著に上昇した。解糖系阻害剤であるモノヨード酢酸で同細胞を処理すると同様にCCN3/Novの遺伝子発現は著しく上昇した。なお、他のCNN1,CCN2, CCN4-6の中ではCCN5の遺伝子発現も上昇し、CCN2/CTGFの遺伝子発現は低下した。一方、同細胞におりオリゴマイシンを作用させて酸化的リン酸化を阻害してもCCN3遺伝子発現には変動はみられなかった。なお、モノヨード酢酸によるCCN3の遺伝子発現の上昇は解糖系阻害によるCCN3プロモーター活性の上昇によることがわかった。以上の結果は、軟骨細胞におけるCCN3の転写が、ミトコンドリアにおけるATP産生(エネルギー産生)ではなく解糖系活性の直接的制御下にあることを示すとともに、関節軟骨においてグルコース欠乏の際にはCCN3が誘導され、軟骨防御機構が働く可能性を示している。 2)トリプトファン代謝物セロトニン(5-HT)の受容体(5-HT2R)のサブタイプである5-HT2ARおよび5-HT2BRがヒト軟骨細胞用細胞株HCS-2/8に発現していた。同細胞にて、軟骨成長・再生因子であるCCN2/CTGFの産生が5-HT2ARのアゴニストにより、また、5-HTと5-HT2BRアンタゴニストの同時投与により増加した。一方、5-HTと5-HT2ARアンタゴニストにより減少した。マウス成長板には5-HT2ARが、関節軟骨には5-HT2BRが局在した。これらの知見から、5-HTが成長板の5-HT2ARを介してCCN2の産生を促進し、関節軟骨の5-HT2BR介してCCN2の産生を抑制していること、即ちトリプトファン代謝物が軟骨のCCN2の産生を制御していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、三大栄養素のうち糖質代謝産物とアミノ酸代謝産物の軟骨においてニュートリゲノミクスが適応出来ることを示す例をそれぞれ一例ずつ示す予定であったが、糖質代謝産物の一例としてグルコース、アミノ酸代謝産物の一例としてトリプトファン代謝物セロトニン(5-HT)について研究実績の概要に記載した成果を挙げただけでなく、その成果を学会発表はもとより、論文として国際誌に発表することまで出来た。通常、データが出揃ってもそれを国際誌に発表し論文化するには、早くて数ヶ月、場合によっては年単位の時間を要することも多く、このことを考えると当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨ニュートリゲノミクスの端緒を開く研究として、糖質代謝物とアミノ酸代謝物をそれぞれ1例ずつ、論文発表出来たので、他の糖質代謝物とアミノ酸代謝物についても検討して、その例を増やしていくこととする。対象としては、研究計画調書に記載したとおり、糖質代謝物としてはグルコサミン等、アミノ酸代謝物ではポリアミン、メラトニン等が挙げられる。さらに、上記の糖質代謝物とアミノ酸代謝物のそれぞれ1例ずつが、予想以上に早くデータが出揃ったため、その論文化を急いだが故に、メタボローム解析が先送りになったが、これを遂行して新たな調節機能を有する代謝物の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の如く、軟骨ニュートリゲノミクスの端緒を開く研究として、糖質代謝物とアミノ酸代謝物をそれぞれ1例ずつ示すことが出来、研究が予想以上に順調に進んで、使用する消耗品費も押さえることが出来、労力と時間も論文執筆に費やす比率が高くなった。一方、その分、費用のかかるメタボローム解析実験が次年度へ先送りとなった。結果として相応の次年度使用額が生じた。 しかし、この金額は当初の予定のメタボローム解析(外注)を行えば、使用し尽くしてしまうことになる金額であり、次年度はその計画をしている。なお、メタボローム解析は軟骨ニュートリゲノミクスの例を予想代謝物により容易に示すことが出来なかった場合の代替え例を探す目的と、もし示し得た場合にはさらに数多くの例を見出し研究を飛躍的に進展させるために計画していたものであり、H29年度に行わなかったからと言って、糖質代謝物とアミノ酸代謝物の例をそれぞれ1例ずつ示すことができ、その論文化もできた以上、決して研究の遅れを示すものではない。
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