研究課題
1)栄養学的必須アミノ酸メチオニンの代謝産物である S-アデノシルメチオニン (SAM)で、ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8刺激すると、4時間後に軟骨成長分化因子CCN2の、24時間後にはII型コラーゲンの遺伝子発現が上昇し、48時間後には細胞数の増加を認めた。さらにHCS-2/8をSAM存在下で1週間培養後、アルシアンブルー染色したところ、SAM添加群では対照に比べ濃染した。即ちプロテオグリカン蓄積量の増加を認めた。さらに、このSAM添加時にSAMの誘導体であるSAM脱炭酸生成物 (dcSAM)の生成阻害剤を共添加した群ではSAMによるアルシアンブルー染色の上昇が抑制された。dcSAMはポリアミン生成の中間体であるが、我々はポリアミンが軟骨細胞の増殖、分化を促進することを報告しているので、この作用にはdcSAMを介したポリアミン合成の促進が関わっていることが示唆された。2)糖質代謝中間代謝物メチルグリオキサール(MG)を1mMの濃度でHCS-2/8細胞培養系に添加すると、細胞形態に変化はなかったものの、軟骨成長分化因子CCN2のmRNAレベルは約35%抑制された。即ち、MGが軟骨細胞の分化形質発現に関与している可能性が示唆された。3)マウス未分化間葉系幹細胞C3H10T1/2及び3T3-L1細胞に、低出力性パルス超音波(LIPUS)を作用させるとCCN2の遺伝子発現レベルが有意に上昇し、脂肪細胞分化が抑制された。従って、CCN2は未分化間葉系幹細胞の脂肪細胞分化を抑制することにより、同細胞を軟骨・骨系細胞へ分化させる可能性が示唆された。以前にCCN2がすでに分化した軟骨細胞の基質合成を促進し関節軟骨の維持・再生を促すことは報告済みであるが、今回、CCN2の遺伝子発現を上昇させる栄養代謝物が間葉系幹細胞の分化の段階でも関節軟骨維持・再生作用を発揮する可能性が示唆された。
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