研究課題
シェーグレン症候群は、ドライアイ、ドライマウスを主症状とする自己免疫疾患で、病理組織像において、涙腺および唾液腺特異的に、導管周囲に著明なリンパ球浸潤を認める。浸潤するリンパ球の主体は活性化した自己反応性T細胞であり、これらの免疫反応により外分泌機能が傷害される。これまでに、シェーグレン症候群の治療法として自己反応性T細胞の活性化を抑制する方法が模索されてきたが、困難を極めている。本研究はこのような現状を打破するため、細胞内代謝という新たな視点からシェーグレン症候群の発症機序の解明および治療法の構築を試みる。細胞内代謝の変化が細胞の機能と連動するという、「細胞代謝‐機能連関」は、ワールブルグ効果として癌細胞において知られている。免疫細胞も癌細胞と同様、外部からの刺激に伴いエネルギー代謝が激しく変動することが予想されるため、ごく最近になって免疫細胞における「細胞代謝‐機能連関」が注目を浴びている。しかしながら、この分野は未開拓の領域であり詳細は未だ不明である。したがって、本研究ではシェーグレン症候群の発症メカニズムを「細胞代謝‐機能連関」の視点から探るべく、疾患特異的なT細胞の細胞内代謝システムを解明する。その結果に基づき、自己反応性T細胞の細胞内代謝を正常なT細胞の代謝にシフトさせることで、T細胞の活性化を抑え、病態の発症あるいは増悪を抑制することを目指す。本年度は、シェーグレン症候群モデルマウスおよび正常マウスのCD4陽性T細胞について定量プロテオーム解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
シェーグレン症候群モデルマウスおよび正常マウスの脾臓より分離したCD4陽性T細胞についてTMT標識を行い、10種類のサンプルについて同時に定量プロテオーム解析を実施した。その結果、大きな差異のあった分子群について文献検索や機能解析などを行うことにより、治療標的候補分子群を抽出することができた。
疾患モデルマウスのT細胞に特異的な代謝経路を同定し、その制御機構の解明を目指す。また、酵素活性も代謝経路の反応を制御するため、代謝酵素の活性を規定するリン酸化に対して、リン酸化プロテオーム解析を行う。さらに、想定外の鍵因子の取りこぼしを避けるため、広範な遺伝子のmRNAレベルの変動を俯瞰できるマイクロアレイ解析を行う。
11月4日より産休に入ったため研究を中断した。次年度は今年度に抽出した治療標的分子群について病態に及ぼす影響を、疾患モデルマウスを用いてin vitro、およびin vivoにおいて詳細な解析を行う予定である。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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