口腔領域の最も主要な悪性腫瘍である口腔扁平上皮癌の予後を規定する最も重要な因子は転移である。しかし、 未だ有効な分子標的治療は開発されておらず、 他臓器の癌と比較し、研究が遅れているのが現状である。その理由として1)培養細胞主体のin vitroの実験が多い、2)遺伝子発現量の差の大きいものに着目した研究が多い、3) 適切なマウスモデルがないなどの点が考えられる。これらの点を踏まえ、高転移同種同所移植口腔 扁平上皮癌マウスモデルの創出を試みる。具体的には、転移能のないマウス口腔扁平上皮癌細胞株をsh RNA libraryにより形質転換させ、転移巣より細胞を分離し、形質転換により高い転移能を獲得した細胞を濃縮し、shRNAの標的遺伝子を同定する。さらにノックアウト細胞を樹立し、その同種同所移植をマウスモデルとして樹立し、転移の病態解明や新規治療薬開発有用なツールの確立を目指すことを目的としている。本年度は当初の研究計画に若干の変更を加え、将来的にin vivoイメージングにも応用可能にするため、蛍光タンパク質を安定性に発現することに加えて、同時にルシフェラーゼを発現するマウス頭頸部扁平上皮癌細胞株の作製を行った。 レンチウイルスベクター(pCSII-CMV-Luc2-IRES-Venus)を作製し、C57BL/6マウス由来口腔扁平上皮癌細胞株であるHNM007細胞に感染させ、ルシフェラーゼと蛍光タンパクを安定に発現する細胞株を作製した。蛍光顕微鏡で観察したところ多くの細胞で強い蛍光が得られたが、中には蛍光の弱い細胞や蛍光を発していない細胞も散見されたため、セルソーティングを行い、傾向の強い集団を分離した。また分離培養した細胞を溶解し、ルシフェリンを加えたところ、強い発光が測定された。C57BL/6マウスに同所移植したところ造腫瘍能は保たれていた。
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