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2017 年度 実施状況報告書

炎症制御におけるミトコンドリアの新規機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K19768
研究機関長崎大学

研究代表者

武田 弘資  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (10313230)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード炎症 / ミトコンドリア / インフラマソーム / シグナル伝達
研究実績の概要

これまでに我々は、NLRP3インフラマソーム(IFS)活性化におけるミトコンドリアの役割は活性化刺激ごとに異なり、少なくとも細胞外ATPによる活性化に際してはミトコンドリアが機能を維持している必要があることを見出している。ATPはリガンド作用性イオンチャネルであるP2X7を介してNLRP3-IFSの活性化を誘導しているが、同時にP2X7は細胞内にCa2+を流入させることが知られている。そこで、ATP刺激によるCa2+流入がNLRP3-IFSの活性化に与える影響を検討した結果、Ca2+の流入はATP刺激によるNLRP3-IFSの活性化には必要なく、むしろCa2+の過剰流入はNLRP3-IFSを抑制することが分かった。また、ATP刺激による細胞内へのCa2+の流入に伴ってミトコンドリア内へのCa2+の流入も増加した。さらに、脱共役剤CCCPはATP刺激によるNLRP3-IFSの活性化を抑えるが、その際のCCCPによるNLRP3-IFSの阻害には細胞外からのCa2+流入が必要であることが明らかとなった。以上の結果より、ミトコンドリアのCa2+調節能に依存してATP刺激時の細胞内Ca2+の濃度や分布が適正に保たれ、NLRP3-IFSの活性化が促進されることが示唆された。一方、以前我々は、化合物スクリーニングによって細胞外ATPによるNLRP3-IFSの活性化を選択的に抑制する化合物を同定しているが、そのうちの2化合物が共通して抑制するプロテインキナーゼX(PKX)についても解析を進めたところ、PKXがP2X7を介してATP刺激によって活性化されることが分かった。さらに、マウス腹腔マクロファージでPKXをノックダウンすると、ATP刺激によるIL-1bの細胞外放出が低下することから、PKXがATP刺激によるNLRP3-IFSの活性化を促進する分子であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞外ATPによる刺激において働く機構ということで、P2X7を介したCa2+シグナルに着目して研究を進めたことが幸いして、ミトコンドリアによるCa2+調節がATPによるNLRP3-IFSの活性制御に重要な役割を担っていることを示すデータが得られたことが大きな進捗であった。また化合物スクリーニングの結果からATPによるNLRP3-IFSの活性制御を担う分子と予想していたプロテインキナーゼX(PKX)が、ノックアウト実験により実際にそのような働きを有していることを見出したことも大きな成果であった。

今後の研究の推進方策

PXKがミトコンドリアのCa2+調節に関わっていることを示す予備的なデータが得られているため、その点を詳細に解析して明らかにするとともに、PKXの分子機能およびミトコンドリアのCa2+制御機構とATPによるNLRP3-IFS活性化機構との接点を見出し、本研究の目的である炎症制御におけるミトコンドリアの新規機能の解明を達成したい。ただし、Ca2+についての解析においては、まだ安定していない実験も多く、より精度の高い実験系の確立が必要である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] WP1066 suppresses macrophage cell death induced by inflammasome agonists independently of its inhibitory effect on STAT3.2017

    • 著者名/発表者名
      Honda, S., Sadatomi, D., Yamamura, Y., Nakashioya, K., Tanimura, S., Takeda, K.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 108 ページ: 520-527

    • DOI

      doi: 10.1111/cas.13154

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structures of PGAM5 provide insight into active site plasticity and multimeric assembly.2017

    • 著者名/発表者名
      Chaikuad, A., Filippakopoulos, P., Marcsisin, S. R., Picaud, S., Schroder, M., Sekine, S., Ichij, H., Engen, J. R., Takeda, K., Knapp, S.
    • 雑誌名

      Structure 25, 1089-1099 (2017)

      巻: 25 ページ: 1089-1099

    • DOI

      doi: 10.1016/j.str.2017.05.020

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] ASK1 facilitates tumor metastasis through phosphorylation of an ADP receptor P2Y12 in platelets.2017

    • 著者名/発表者名
      Kamiyama, M., Shirai, T., Tamura, S., Suzuki-Inoue, K., Ehata, S., Takahashi, K., Miyazono, K., Hayakawa, Y., Sato, T., Takeda, K., Naguro, I., Ichijo, H.
    • 雑誌名

      Cell Death and Differentiation

      巻: 24 ページ: 2066-2076

    • DOI

      doi: 10.1038/cdd.2017.114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ERK signalling as a regulator of cell motility.2017

    • 著者名/発表者名
      Tanimura, S., Takeda, K.
    • 雑誌名

      Journal of Biochemistry

      巻: 162 ページ: 145-154

    • DOI

      doi: 10.1093/jb/mvx048

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] マクロファージの炎症誘導性細胞死を抑制する低分子化合物の同定とその抑制機構の解析2018

    • 著者名/発表者名
      本田 詩乃、武田 弘資
    • 学会等名
      酸素生物学・ダイイングコード合同若手会議
  • [学会発表] 低分子化合物で探るマクロファージの炎症誘導性細胞死の機構2018

    • 著者名/発表者名
      本田 詩乃、日高 葵、西川 恵、武田 弘資
    • 学会等名
      日本薬学会 第138年会
  • [学会発表] ERKシグナルによる細胞運動制御を担うSH3P2-Myosin1E複合体2018

    • 著者名/発表者名
      谷村 進、中邨 翔太、田川 克希、酒井 康介、福田 香凜、堤 健、武田 弘資
    • 学会等名
      日本薬学会 第138年会
  • [学会発表] NLRP3インフラマソーム活性化にともなうマクロファージの細胞死を抑制する低分子化合物の同定とその抑制機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      本田 詩乃、日高 葵、中塩屋 和孝、武田 弘資
    • 学会等名
      平成29年度 日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] ミトコンドリアのストレス感知機構と細胞応答2017

    • 著者名/発表者名
      武田 弘資
    • 学会等名
      第160回日本獣医学会学術集会 日本比較薬理学・毒性学会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Myosin 1Eの細胞質アンカータンパク質SH3P2による破骨細胞の分化制御2017

    • 著者名/発表者名
      中邨 翔太、増山 律子、酒井 康介、貞富 大地、武田 弘資、谷村 進
    • 学会等名
      ConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)
  • [学会発表] NLRP3インフラマソーム活性化におけるミトコンドリアによるCa2+調節の役割2017

    • 著者名/発表者名
      中塩屋 和孝、亀山 由佳、蛯原 燦雄、貞富 大地、谷村 進、武田 弘資
    • 学会等名
      ConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)
  • [学会発表] 1型ミオシンmyosin 1Eと細胞膜変形タンパク質SNX9による細胞運動制御2017

    • 著者名/発表者名
      谷村 進、田川 克希、有近 直也、山中 智絵、福田 香凛、武田 弘資
    • 学会等名
      ConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)
  • [学会発表] 切断型PGAM5による選択的pre-mRNAスプライシングの制御2017

    • 著者名/発表者名
      横関 雅史、山口 文音、石川 颯、堀川 幸一郎、谷村 進、武田 弘資
    • 学会等名
      ConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)
  • [学会発表] 3T3-L1細胞のTNF-alpha応答におけるNLRP3の役割2017

    • 著者名/発表者名
      古岡 真菜、尾崎 惠一、谷村 進、武田 弘資
    • 学会等名
      ConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)

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公開日: 2018-12-17  

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