研究課題
生体内の骨組織や軟組織の石灰化の初期段階では、その素材となるカルシウムイオンやリン酸イオンが細胞から放出される小胞に取り込まれ内部で著しく濃度が高まることで、難溶性のリン酸カルシウム化合物を生成する。本研究では、石灰化超初期の小胞内カルシウム流入と、硬組織の石灰化や異所性石灰化が特定の組織に限定される局所化の仕組みを明らかにする。平成29年度は石灰化超初期の小胞活動を推し進める条件を明らかにするために、① 濃度勾配に逆らい小胞内にカルシウムを流入させる候補分子の小胞局在を評価し、② 細胞外小胞へのカルシウム流入の検出を試みた。① マウスの骨芽細胞を培養し、その培養上清から遠心分離法とアフィニティ生成法により細胞外小胞を回収した。また、異所性石灰化を生じる軟組織細胞試料として、石灰化病変が確認された弾性繊維細胞を培養し、培養情勢から細胞外小胞を回収した。ATP駆動型のカルシウムポンプの局在をウェスタンブロット法により確認した。カルシウム流入候補分子としては、ATP駆動型カルシウムポンプの局在を確認した。また、ATP代謝分子の局在は検出されなかったことから、小胞自身は外液のATP量を変化しないことが示唆された。② ①で使用した培養上清から遠心分離法および、アフィニティ精製法により細胞外小胞を回収し、Fura-2カルシウムプローブを導入して小胞内カルシウム流入の検出を試みた。遠心分離法にて回収した小胞でごくわずかなカルシウム流入がATP作用依存的に確認された。しかしながら、石灰化を開始する濃度のカルシウム流入は観察されなかった。
3: やや遅れている
細胞外小胞へのカルシウム流入を評価するための十分な検出感度が得られていない。そのため、小胞内へのカルシウム蓄積量の把握が困難である。細胞外小胞の膜構造を維持し、カルシウムを補足するキレート剤を使用しない方法を検討する必要がある。
平成29年度に遂行予定であったATP依存的な小胞カルシウム流入については、引き続き条件を改良して検討を行う。さらに、平成30年度は石灰化細胞外小胞の臓器特異的分布能を検討する。試験試料として、石灰化モデルであるENPP1機能不全マウス由来の細胞を用いる。このマウスの様々な組織から細胞外小胞を単離する。カルシウム流入因子が局在し、カルシウム流入が促進した小胞のインテグリンパターンをウェスタンブロット及びプロテオミクス解析により検討する。インテグリンは臓器向性の決定要素であるため、小胞のインテグリンパターンはそれを単離した組織(細胞)に親和性があるか、あるいは、遠隔組織に特異性があるかを調べる。
細胞外小胞内へのカルシウム流入試験が予定よりも遅れたため、使用する消耗品の購入が少なくなり未使用額が発生した。平成30年度に実施予定である。
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