研究課題/領域番号 |
17K19772
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
後藤 哲哉 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (70253458)
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研究分担者 |
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
八坂 敏一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20568365)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 三叉神経 / 疼痛 / 三叉神経節 / マクロファージ / 増殖 / 衛星細胞 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画としてはマウスの上顎神経を結紮したのち、三叉神経節内での細胞の動態、特にマクロファージ様細胞の動態を詳細に調べることであった。マクロファージ様細胞は上顎神経結紮後、3日間で急激に増加しその後は1週間以上に渡って増加した状態で一定になった。また、増加した細胞が内在性のものが増殖したものか、骨髄由来の細胞が流入したものかを調べる為に、GFP発現マウスとのキメラマウスを使い同様の実験を行った。結果、ほとんどの細胞が内在性のマクロファージ様細胞が増殖したものであったが、一部血管からの細胞の流入も見られた。増殖したマクロファージ様細胞の動態を詳細に調べると、細胞傷害型もしくは貪食に至るマクロファージ様細胞と、一部突起を伸ばし三叉神経節の神経細胞に突起を伸ばし、衛星細胞と神経細胞の間に入り込む細胞保護型のマクロファージ様細胞が認められた。神経細胞を細胞死を検出するTUNEL法と細胞傷害のマーカーであるATF3で染色すると、多くの細胞がATF3陽性を示すが、細胞死を示すTUNEL陽性の神経細胞は少なかった。これらの結果より、三叉神経に慢性刺激を与えると、内在性のマクロファージが増殖し、活性化が誘導され三叉神経節神経細胞周囲の衛星細胞のバリアを突破してマクロファージ様細胞が接触し、何らかの保護作用をしていることが示された。一方、三叉神経節も内在性以外のマクロファージ様細胞の動態を調べるためにカエデマウスの導入を予定していたが、導入が遅れ次年度に導入がずれ込むことになった。現時点では、カエデマウスの代わりにキメラマウスを使って同様の実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画ではカエデマウスを導入する予定であったが、手続きが遅れてまだ導入できていない。カエデマウスについては通常のホルマリン固定では蛍光が消失する欠点が見つかったので、その点についてもどのように研究に用いるか、検討が必要である。三叉神経節神経細胞とマクロファージ様細胞の相互作用を生じる分子についての具体的な検索が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまずは進行しているマクロファージ様細胞の形態変化を詳細に検討し、傷害型なのか保護型なのかの検討を行う。また、傷害型なのか保護型かの種々のマーカーを用い再度確認する。次に、三叉神経節における神経細胞もしくは衛星細胞から出されるマクロファージの増殖因子が何かを確認し、また活性化したマクロファージ様細胞が神経細胞にコンタクトして何を認識しているのかを明らかにする。並行して、カエデマウスを導入し、侵害刺激授与後の細胞動態について調べる。最終的には疼痛閾値に対してどの様なファクターが働いているのか、動物の行動実験も含めて調べる。 もし、カエデマウスを使った実験が当初の予定どおり進まなかった場合は、GFP発現マウスとのキメラマウスを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度にカエデマウスを導入する予定であったが、導入準備に時間がかかったため平成29年中の導入ができなかった。したがってその分の予算を平成30年度に残しておくことになった。平成29年度の残高は平成30年度のカエデマウスの導入として使う予定である。
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