研究課題/領域番号 |
17K19776
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (10367617)
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
中本 哲自 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (30514989)
中村 美どり 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (90278177)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨吸収 / 骨形成 / RANKL / OPG / 骨粗鬆症 / 歯周病 / 心臓肥大 |
研究実績の概要 |
生命の危機を惹起する血液中のカルシウム濃度の変動を調節している最も重要な器官は骨である。骨は、我々の体を支え運動機能を担当しているのみならず、生命を維持するための臓器として絶えず動的に活動している。骨吸収と骨形成が絶え間なく繰り返されることにより、古い骨が新しい骨に置換されていく過程で血液中のカルシウム濃度は調節されている。この骨吸収と骨形成は、動的平衡の状態に保たれた共役(カップリング)現象を示す。しかし、様々な全身的要因により骨吸収が骨形成を凌駕すると、骨粗鬆症を発症することとなる。骨形成の亢進に先立って必ず骨吸収の亢進が認められることより、骨吸収と骨形成がカップリングしていることは予想されてきた。骨芽細胞由来の破骨細胞分化因子であるRANKLの発見(1997年)を経て、現在では、RANKL中和抗体が骨粗鬆症や高カルシウム血症の治療薬として臨床応用されるに至った。一方、RANKLのデコイ受容体であるオステオプロテゲリン(OPG)は、破骨細胞の分化を強く阻害する。したがって、OPG遺伝子欠損マウスとRANKLの高発現マウスは、共に骨粗鬆症となる。これらの骨粗鬆症マウスを用いた実験結果から、骨細胞が産生するOPGが皮質骨や歯槽骨の維持に重要な役割を果たしていることが、OPGの新しい機能として注目されてきている。すなわち、骨(オステオ)を保護(プロテクト)するサイトカインとして命名されたオステオプロテゲリン(OPG)の骨組織における生理作用の重要性が証明されたわけである。また、OPG欠損マウスは加齢と共に心肥大となり、アンジオテンシンⅡ投与により、OPG欠損マウスは更に心肥大を呈し心機能が低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OPG欠損マウスは加齢と共に心肥大となり、アンジオテンシンⅡ投与により、OPG欠損マウスは更に心肥大を呈し心機能が低下することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)OPG-/-マウスおよびRANKL遺伝子強発現マウス(RANKLTg)の心臓血管系の解析 RANKL遺伝子強発現マウス(RANKLTg)はOPG-/-マウスと同様に、破骨細胞性の骨吸収が亢進し、骨粗鬆症を呈する。OPG-/-マウスに対するアンジオテンシンⅡ(昇圧剤)投与により、更に心肥大を呈し、心収縮力が悪化した。また、OPG欠損マウスに対するOPGの投与により、骨密度は上昇する一方、高血圧は低下し、心収縮力は改善した。 OPGはRANKLのデコイ受容体であるので、OPG欠損マウスにおける高血圧がRANKL信号の遮断である可能性がある。RANKLTgおよび可溶性RANKL投与マウスにおける心臓血管疾患や糖尿病の発症の有無を詳しく解析する。 (2)加齢疾患モデルマウスにおけるOPG発現および歯周病発症との関連解析 高血圧治療におけるサイアザイド系利尿薬投与患者において骨量増加作用が認められることが知られている。また、心臓冠状動脈を通過した血液においてOPG濃度は高まり、アンジオテンシン阻害薬(降圧剤)服用患者では、OPG濃度は上昇しない。今回のOPG欠損マウスを用いた解析から、OPGは心臓の構築および機能を維持するために重要な役割を果たしていることが示された。そこで、老化促進モデルマウス(SAMP)、2型糖尿病モデルマウス(KK-Av/TaJcl)、動脈硬化モデルマウス(apoE 欠損マウス)、アルツハイマー病モデルマウス、妊娠高血圧症候群モデルマウスなどを用いて、OPGの発現を各種臓器において解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)加齢疾患モデルマウスにおけるOPG発現および歯周病発症との関連解析実験が遅延したため。 (使用計画)上記実験を早急に開始する予定である。
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