研究課題/領域番号 |
17K19777
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
沢 禎彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70271666)
|
研究分担者 |
加藤 幸成 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00571811)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | podoplanin / cKOマウス / 口腔扁平上皮癌 / 癌関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
当該年度は、新規抗体の開発ならびにcKOマウス由来骨芽細胞の確立を行った。抗体の開発に関して、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株が発現する腫瘍特異的podoplaninエピトープを認識する癌特異抗体Cancer specific Monoclonal antibody CasMab LpMab-23を開発し、舌ガン患者に対するスクリーニングを行った結果、舌ガン患者には本抗体陽性のものと陰性のものが見られ、LpMab-23陽性腫瘍は頚部リンパ節転移と局所再発が有意に多く、術後5年無病生存率が有意に低下すること、頚部リンパ節転移腫瘍には陽性のものが有意に多いことを明らかにするとともに、予後予測因子として極めて有用であることを報告した。本抗体によって染色される癌関連線維芽細胞cancer-associated fibroblasts CAFは非常に少なく、本研究課題であるCAFが発現しているpodoplaninは、腫瘍が発現しているpodoplaninとは、抗原決定基が異なっていることも明らかとなった。すなわち、腫瘍細胞におけるpodoplaninの機能は、血小板膜タンパクCLEC2との結合で、これによって腫瘍周囲に血小板を凝集させることで免疫細胞から逃れること、また、腫瘍周囲に増生する線維性結合組織を産生するCAFにおけるpodoplaninの機能は、細胞骨格のリアレンジメントにより、細胞の運動機能を亢進させることという予測に沿うものとなった。そこで、申請者が確立したpodoplanin フロックスマウスとCol1a-Creマウスとの交配によって、線維芽細胞や骨細胞におけるpodoplaninの発現がcKOされることが予想されるマウスの作出に着手した。現在、このマウスのジェノタイピングと頭蓋冠細胞の収集が終了し、podoplanin cKO骨芽細胞の樹立を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、まず口腔扁平上皮癌とCAFにおけるpodoplaninの発現を、新規抗体の開発によって検討した。抗体の開発に関して、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株が発現する腫瘍特異的podoplaninエピトープを認識する癌特異抗体 LpMab-23を開発し、舌ガン患者に対するスクリーニングを行った結果、舌ガン患者には本抗体陽性のものと陰性のものが見られ、LpMab-23陽性は頚部リンパ節転移と局所再発が有意に多く、術後5年無病生存率が有意に低下することを明らかにするとともに、新規開発抗体が予後予測因子として極めて有用であることを報告した。本抗体陽性のCAFは非常に少なく、本研究課題であるCAFが発現するpodoplaninは、腫瘍が発現するpodoplaninとは抗原決定基が異なっていることも明らかとなった。そこで、申請者が開発したpodoplaninフロックスマウスとCol1a-Creマウスとの交配によって、線維芽細胞や骨細胞におけるpodoplaninの発現がcKOされることが予想されるマウスの作出に着手した。このマウスの開発が成功すれば、担癌マウスとして利用し、podoplanin陰性(podoplanin cKO)および陽性(wild type)マウスに移植した腫瘍の成長分析により、CAFにおけるpodoplaninの機能を解明できる。Col1a-Creマウスとの交雑系作出は成功し、研究の進捗状態は良好であると判断した。申請者は福岡歯科大から岡山大に異動したが支障なく遂行し、当初計画通りである。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、CAFにおけるpodoplaninの発現がcKOされることの予想されるB6コンジェニックのCol11-Cre; Pdpn cKOマウスを作出した。現在、このマウスのジェノタイピングと頭蓋冠からの細胞の収集が終了し、podoplanin cKO 骨芽細胞の樹立を目指している。骨細胞は通常、podoplaninを発現する。そこで、Col11-Cre; Pdpn cKOマウス骨細胞のpodoplanin cKOを確認するため、頭蓋冠から骨芽細胞を収集、石灰化培地で培養して骨細胞に分化させる。これがpodoplanin陰性であれば、次にこのPdpn cKOマウスにB6マウス由来の転移性メラノーマ細胞株B16F10を移植、その移植効率と生存曲線をワイルドタイプB6マウスと比較する。同時に、CAFにおけるpodoplaninの発現を、cKOマウスとワイルドタイプで比較する。In vitro段階での成功が見込まれたので、いよいよ担癌マウスの作製とデータ収集のため動物実験委員会申請に着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更(福岡歯科大学→岡山大学)に伴い、研究倫理審査等実験開始に伴う環境の整備・調整に時間を要した。研究の進捗は予定通りであるが、現在、備品に関して、本研究計画の実施に必要であり、申請者に教室に設置されていないもの、形式が古く精度に欠けるもの、狭小で実験進行に支障を来すため、できれば拡張したいものについて、限られた資金でどの程度購入が可能か、実験の進捗状況と他の予算を含めて勘案・折衝している。
|