本研究の目的は、地域において個人レベルおよび地域レベルの高齢者の社会参加が転倒に影響するかを明らかにすることである。日本老年学的評価研究(JAGES)2016の参加者の内、北海道の参加者466名に対し訪問調査を行った。転倒については訪問調査時に転倒に関する項目を質問紙にて調査した。社会参加はJAGES 2016の質問紙で8種類の地域組織(ボランティア、スポーツ、趣味、老人クラブ、町内会、学習サークル、介護予防、継承活動)への参加と就労を尋ねた。個人レベルの社会参加は、高齢者が参加している組織(就労を含む)の数を合計し、社会参加項目数と定義した。地域レベルの社会参加は、各町におけるJAGES2016参加者の社会参加項目数の平均とした。社会参加項目数と転倒の関連を、一般化線形混合モデル(マルチレベルPoisson回帰モデル)で解析した。性別、年齢、学歴、身体活動量(活動量計による中高強度の身体活動)、脳梗塞、視覚障害、うつ、認知機能(MoCA-J)を共変量として調整した。 解析対象者の平均年齢は74.7歳であった。転倒者は128名(27.4%)であった。転倒群では非転倒群に比べて、身体活動が高い者(MVPA第3三分位)、視覚障害、うつの割合が高かった。一般化線形混合モデルの結果、転倒の地域間のばらつきは小さく、個人レベル、地域レベルともに社会参加項目数と転倒には有意な関連はみられなかった。本研究の対象者は社会参加に積極的な集団で、そのばらつき小さかったため社会参加の転倒への影響が検出できなかった可能性があり、社会参加数の違いの大きな地域で社会参加と転倒の関連の検討が必要である。
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