【目的】近年、肥満や非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に腸内細菌叢が影響していることが報告されてきているが、腸内細菌叢の変化がこれらの原因なのか結果なのかも依然不明である。これまでの報告は医療機関をベースとした数十例程度のものが多いことが理由の一つとして挙げられる。今回、一般住民を対象とした大規模な調査によりNAFLDと腸内細菌叢について検討した。 【方法】岩木地区健康増進プロジェクトに参加した1148名の腸内細菌を解析した。腸内細菌は便検体を用いて16srRNA遺伝子塩基配列より菌群の帰属を推定した。ウイルス性肝炎(HBV抗原陽性、HCV抗体陽性)やアルコール飲酒(男性30g/日、女性20g/日以上)、薬剤内服(アミオダロン、メトトレキセート、タモキシフェン、ステロイド)を除外した874人を対象とし、腹部超音波検査にて脂肪肝を認めたものをNAFLD群とした。NAFLD群(205人)と正常群(669人)で、全体の1%以上の存在率を示す腸内細菌を比較した。 【結果】1%以上の存在率を認めたのは4門、6鋼、7目、9科。12属であった。その中でNAFLD群と正常群で0門、2鋼、2目、3科、3属で優位差がみられた。BMIによる調整を行い153組をマッチ後に比較検討を行うとRuminococcaceae科とFaecalibacterium属がNAFLD群で有意に存在率の低値を認めた。 【結論】NAFLD群と正常群ではBMIマッチ後においても腸内細菌叢に違いを認め、腸内細菌叢がNAFLDの発症、抑制に関与している可能性が示唆された。
|