2019年度は2018年度に改善した船舶遠隔健康管理システムを引き続き用いて、2018年度と同様の船舶と航路で実証実験を行った。2019年7月~8月までの外航船にシステムを搭載した。乗組員8名にご協力いただき、全員に航海前後の測定(体重、血圧、脈拍、体温、内臓脂肪量)を、そのうち4名に航海中の船舶遠隔健康管理システム上に日々の健康情報(問診、血圧、脈拍、体重、体温、歩数)の記録を依頼した。 航海中の記録の実施状況は、個人差があるものの、歩数計の記録は概ね80%実施できたがその他の項目の実施は歩数より少なく、血圧、問診、体重の順に実施がされていた。体重測定は船の揺れのため測定できない日があったと推測される。血圧、問診、体重測定歩は機器のある部屋で行う必要がある。歩数計のようにウエアラブルなデバイスを取り入れることがより実用的な健康情報のモニターするシステム作りに必要と考えられた。 航海中に船舶遠隔健康管理システムに参加し健康情報を記録した4名と非参加の4名について、航海前後の体重や内臓脂肪量の変化を比較した。非参加者の方が参加者よりも体重、Body Mass Index、収縮期血圧、腹囲の減少割合が高かったが、内臓脂肪量は非参加者の方が減少程度が高かった。 2019年度も衛星通信を使用したが初めて予期せぬ通信量の増大が見られた。後の調査によりOSの強制更新の可能性が考えられた。通信量の増大は通信費用の増大を招く。実用上、通信を利用した船上における健康管理実施の課題となった。 実験を通して参加者は航海中の記録の有無にかかわらず航海前後における自身の測定結果には関心が高かった。航海中の健康への関心の持続を惹起するシステムの開発が望まれる。
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