研究課題/領域番号 |
17K19805
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 徳多郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (50600607)
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研究分担者 |
浅村 英樹 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80324250)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 死因究明 / 溺死 / アオコ / ミクロシスチン / 壊機法 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
溺死は、溺水時に生存していたか否かの判断が重要になっている。そのため、溺死体の臓器からプランクトン(珪藻類)の検出・検査をする壊機法が一般的に行われている。しかし壊機法は、設備面、安全面、環境面などに大きな問題点があることから、これに代わる方法が模索されている。本研究では、湖沼、河川で発見となった溺死体の血液などから、溺水中に含まれているミクロシスチンという「アオコ(藍藻類)」によって生産される代表的な毒素を検出して溺死診断を行ない、短時間で適正、確実な死因究明の一手段として活用することを目的としている。 本研究は、①分析方法の確立、②過去の法医解剖で取り扱った溺死体の血液、臓器等の分析、③試料と対照水との濃度分布による相関、④従来から実施している壊機法によるプランクトン検出結果との比較、⑤ミクロシスチンの濃度による死亡時季、死亡場所の推定、を実施する。 ミクロシスチンは、極低濃度で分布しているため、通常よりも高感度の分析・解析をする技術が必要であり、平成29年度は、ミクロシスチンの分析方法を確立するために、分析機器の選定、メソッドの構築、前処理方法の選択等を繰り返して慎重に測定方法を検討してきた。その結果、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使用して、検出器は簡便で高効率なフォトダイオードアレイ吸光度検出器(PDA)よりもタンデム質量分析計(MS/MS)が適しており、メソッドと試料の前処理は、法医解剖の薬毒物検査で日頃使用しているメソッドをそのまま使用して、前処理は固相抽出法(Oasys HLB)、QuEChERS法が最適であることが判明してきた。 溺死体は、死後変化を受けた多種類の試料が対象であることから、ミクロシスチンの分布についても明らかにするための定量分析が必要であり、今後バリデーションを行って信頼性のある測定値を評価したのちに分析へと進んでいくところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、分析方法を確立して過去の法医解剖で取り扱った溺死体の血液、臓器等の分析を進めていくところであるが、血液などの試料中に含有するミクロシスチンは検出限界付近での存在が多いためバリデーションがとりづらく、難航していることからやや遅れていると判断した。信頼できる測定値が確認できたところで、次の測定に進んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定どおり過去の法医解剖で取り扱った溺死体の血液、臓器等の分析、対照水の分析などを進め、溺死体とミクロシスチンの関連性について検討するとともに、濃度分布、すでに実施した壊機法によるプランクトン検出結果との比較など、広く死因究明の一手段として活用できるかについて検討していく。
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