研究課題
近年、我が国では低出生体重児が増加している。妊娠中の喫煙は出生時低体重の重要な原因である。出生コホート研究では、妊娠中に喫煙した女性では非喫煙者に比べて児の出生時体重が有意に少ないことが報告されている。また疫学研究の結果から、胎児期の発育遅延が成人期の高血圧や糖尿病などの慢性疾患の危険因子になるという概念(DOHaD仮説)が提唱されている。マイクロRNA(miRNA)とは、標的遺伝子の発現を抑制する短いRNAであり、様々な疾患に関与することが知られている。miRNAの発現は化学物質の曝露などの環境因子による影響を受ける。血液中のmiRNAはヒト疾患の新規バイオマーカーとして注目されているが、環境保健および母子保健領域において疾病のリスク評価に応用する道筋は立っていない。本研究では、研究分担者の岸が主宰する北海道スタディに参加した妊娠後期女性(喫煙者と非喫煙者各8例、計16例)の血漿におけるmiRNA発現量への喫煙の影響と児の出生時体重との相関を解析した。その結果、マイクロアレイ解析で児の出生時体重と正の相関を示す複数のmiRNAを見いだした。しかし、リアルタイムPCRによる解析では一致した結果が得られなかったため、試料の採取方法や解析方法について今後さらなる検討が必要と考えられた。また、本課題に関連する研究成果として、産業化学物質(石綿およびインジウム化合物)を気管内投与した実験動物(マウスおよびラット)の肺組織におけるmiRNA発現をマイクロアレイとリアルタイムPCRにより解析した結果、呼吸器の発がんや線維化に関連する複数のmiRNAおよび標的遺伝子候補の発現量が有意に増減することを明らかにしている。以上の結果から、miRNAは環境因子に起因する疾患のバイオマーカーとして応用できる可能性が期待される。
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