研究課題/領域番号 |
17K19823
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
野間口 千香穂 宮崎大学, 医学部, 教授 (40237871)
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研究分担者 |
野末 明希 宮崎大学, 医学部, 助教 (30569794)
荒武 亜紀 宮崎大学, 医学部, 助教 (90773523)
矢野 朋実 宮崎県立看護大学, 看護学部, 准教授 (90363580)
狩集 綾子 宮崎大学, 医学部, 助教 (80832881)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝性疾患 / 家族間コミュニケーション / 遺伝性乳癌卵巣癌症候群 / ターナー症候群 / 遺伝学的情報 / 記述研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、遺伝医療において遺伝情報に関する家族間コミュニケーション支援の看護実践や研究に資することを目的とし、未成年の子どもを含む家族間コミュニケーションの様相を明らかにするためがん医療と小児医療の分野での研究を実施している。 がん医療分野では、途中中断を経て遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)関連がんで子をもつ8名の女性に対して、自身の疾患や遺伝情報を親子間で共有する様相について半構成的面接調査を行い、令和3年度はデータ分析を行った。面接データは固有名詞等個人情報を記号化して逐語録化し、M-GTA法を用いて分析した結果、52概念と10カテゴリーが生成された。女性が【遺伝の継承性は重大なこと】ととらえ、HBOCの特性から【知らない方が幸せ】【知らない方がこわい】という局面を経て、親子間で遺伝情報の共有について異なる様相を示していた。 小児医療分野では、ターナー症候群女児の親に対して体質や治療に関連した家族間コミュニケーションの実態の質問紙調査を行った。新型コロナ感染症拡大により配布困難となったが、家族会に協力を得て令和3年5月までに46名からの回答を得た(回収率34.3%)。回答者のほとんどは母親であり、ターナー症候群固有の体質や治療に関する情報を診断当初より得ていた。子どもとのコミュニケーションでは、項目によって異なる特徴を示した。身長や成長ホルモン補充療法は幼少期から母親が説明していた。成人期の健康問題は母親が知っている割合、母親が子どもに説明している割合が他の項目より低く、高校生頃より医師が説明していた。また二次性徴や女性ホルモン補充療法に関することは小学校高学年になると母親、あるいは医師が説明していた。自然妊娠しづらいことは母親は知識として得ているものの子どもの年齢が高くなっても母親が話している割合は7割程度であった。 いずれも現在公表に向けて、まとめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
がん医療分野のデータ収集、小児医療分野におけるターナー症候群に関するデータ収集を終えているが、現在まとめる段階である。小児医療分野における対象は染色体疾患だけでなく、単一遺伝子疾患でのコミュニケーションの様相を記述することが必要と考えられ、ファブリー病を取り上げて小児期に発症している青年期患者への面接を計画していたが、新型コロナウィルス感染症拡大により、面接調査の調整が困難であり、データ収集が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
がん医療分野におけるデータ分析を完了させて、結果を取りまとめ、論文投稿を行う。小児医療分野でのターナー症候群女児の親対象の質問紙調査は、目標対象者数50にほぼ達成したため、現在のデータ分析を進めて、論文投稿を行う。また、小児医療分野ではファブリー病の青年期患者を対象とした面接調査を行う。とともに、がん医療分野と小児医療分野の遺伝医療に関わる臨床家、研究者と研究成果を共有する機会を設けて、臨床適用への検討を行って、最終成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大において、データ収集の方法や期間を延長したいため、令和3年度に計画していた分析が最終段階に至らなかったため、分析ととりまとめの段階で計画していた質的データ解釈の確認、ならびに論文の翻訳校正、遺伝医療に関わる実践家や研究者との意見交換の計画を延期し、令和4年度に行うことにした。そのため、令和4年度には、これらに必要な旅費、謝金等に使用する。
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