研究課題/領域番号 |
17K19839
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
瀧田 結香 (山田結香) 慶應義塾大学, 看護医療学部(信濃町), 助教 (80612605)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症 / 抑うつ / 不安 / QOL / 精神的苦痛 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症患者の不安や抑うつ、QOL、精神的苦痛・困難の実態を明らかにするために専門外来通院中の特発性肺動脈性肺高血圧症(以下IPAH)患者および慢性肺塞栓血栓性肺高血圧症(以下CTEPH)患者を対象に以下の調査項目を実施した(実施施設承認番号2015-429号、所属施設承認番号2016249号)。①抑うつ状態:Patient Health Questionnaire (PHQ-9)、②不安状態:Generalized Anxiety Disorder (GAD-7)、③身体症状ならびにスピリチュアルな側面を含むQOL:Functional Assessment of Chronic Illness TherapySpritual Well-Being (FACIT-SP)、④全般的QOL:MOS-Short form 12(SF-12)、⑤精神疾患有病率:Mini-International Neuropsychiatric Interview(M.I.N.I)精神疾患簡易構造化面接法、⑥精神的苦痛・生活上の困難:インタビューガイドを用いた半構造化面接 2018年3月時点で全対象者(IPAH28名、CTEPH患者50名)の調査が終了(IPAH患者は50名を予定していたが対象者が28名であったため全数実施で完了とした)。 データ分析の結果、軽度うつ症状が全体で45%、PAHにおいては62%と高い割合となっていた。皮下注射療法患者では100%に軽度以上のうつ症状が、33%に不安症症状がみられ、インタビューでは刺入部の疼痛による精神的苦痛が抽出された。静脈注射療法中の患者では29%程度であった一方で、内服薬のみの患者で67%に軽度うつ症状が、33%に中等度うつ症状が、33%に軽度不安症状がみられており、インタビューでは、セレキシパグ内服に伴う嘔気や倦怠感による苦痛が抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査施設において、疾患によって右心カテーテル検査入院の頻度が異なり、入院患者数に偏りがみられていることや、特発性肺動脈性肺高血圧症患者において は、居住する近隣での病院に診療を切り替えるケースも見られていることなどから当初の予定よりも対象となる患者が少なく、対象者の獲得に時間を要している ため。また、対象者の体調や治療・検査のスケジュールの関係で、同意取得や調査実施に時間を要する場合もあったため。
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今後の研究の推進方策 |
データ分析をさらに進め、論文投稿の準備を進めていく。 分析結果をもとに連携研究者およびマインドフルネスに精通している有識者間でプログラム内容の検討を行い、プログラムを作成し、プログラム実施に向けて対象施設および研究者所属施設の倫理申請を行う。倫理委員会の承認後、パイロットスタディを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、プログラム実施時に使用するWeb会議システムを購入する予定であったが、まずは現在の精神状態・QOL・精神的苦痛・生活上の困難の実態を明らかした上で、肺高血圧症患者に対してどこにフォーカスしたプログラム構築が必要なのかを検討し、遠隔でのプログラム参加に関してより慎重に検討する必要があると判断し、購入を見送ったことが主な理由である。 データ分析の結果、患者自身が身体活動をセルフケアできるような支援の必要性も示唆されたため、プログラムの中に身体活動を測定できるデバイスを組み込むことを計画し、平成29年度で未使用となった余剰分を30年度に身体活動測定物品(活動量計や解析システム等)購入に充当していくことを検討したが、1つのデバイスで測定したい項目全てを満たせる物がなく、現在開発中の物品もあったため、購入を保留とした。 引き続き次年度に身体活動を測定できるデバイスを検討し、プログラム内容の検討も合わせて行っていく予定である。
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