研究課題/領域番号 |
17K19839
|
研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
瀧田 結香 (山田結香) 東京家政大学, 健康科学部, 講師 (80612605)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症 / 抑うつ / 不安 / QOL / 精神的苦痛 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症患者の不安や抑うつ、QOL、精神的苦痛・困難の実態を明らかにするために専門外来通院中の特発性肺動脈性肺高血圧症(以下PAH)患者および慢性肺塞栓血栓性肺高血圧症(以下CTEPH)患者を対象にうつ(PHQ-9)・不安(GAD-7)、QOLおよび精神的苦痛・日常生活上の困難に関するアンケート・インタビュー調査を施し、(実施施設承認番号2015-429号、所属施設承認番号2016249号)全数の調査が終了した。 PAH患者のうつ・不安および精神的苦痛に関してミックスメソッドアプローチでの分析を行い、結果を第16回日本循環器看護学会学術集会にて口演発表を行った。その後、CTEPHの分析も行い、結果の統合を行った。その結果、全体の44.1%に軽度以上のうつ症状(PHQ-9≧5)がみられ、PAH61.5%、CTEPH34.7%とPAHで高く、中等度以上のうつ症状(PHQ-9≧10)もPAHで23%、CTEPH14.3%とPAHで高値となっていた。インタビュー分析では、【これまでの自分の喪失【周囲からの孤立】【在宅酸素療法(HOT)による煩わしさ】【進行・悪化への脅威】という共通テーマが抽出された。PAH特有のテーマとして【副作用による苦しみ】が、CTEPH特有のテーマとして【息苦しさという症状そのもの】が抽出された。この結果をrespiratory researchのOriginal articleに投稿するため、論文化の準備を進めた。また、この結果をもとに連携研究者およびマインドフルネスに精通している有識者間でプログラム内容の検討を行い、プログラムを作成し、プログラム実施に向けて対象施設および研究者所属施設の倫理申請を行う準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
稀少疾患であるため母数が少ないことに加え、調査施設において、疾患によって右心カテーテル検査入院の頻度が異なり、入院患者数に偏りがみられていることや、特発性肺動脈性肺高血圧症患者において は、居住する近隣での病院に診療を切り替えるケースも見られていることなどから当初の予定よりも対象となる患者が少なく、対象者の獲得に時間を要した。また、対象者の体調や治療・検査のスケジュールの関係で、同意取得や調査実施に時間を要する場合もあり、実態調査に時間を要し、計画が後ろにずれ込んだ。 さらに、調査データ分析の結果、疾患の特性上通常のマインドフルネスプログラムでは侵襲となり得るとの見解から、実施にあたり十分かつ精緻な検証が必要と判断し、プログラム要素検討に時間を要した。以上のことから、研究の進捗が遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、倫理申請を2020年3月に行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響により倫理申請が行えずにいる状態であるため、緊急事態宣言解除後に倫理申請手続きを進めていく。また、検討を重ね作成したプログラムは初回と最終回に参加者を招集し、対面で実施する形に決定していた。しかし、新型コロナウィルスの流行に伴い、対象者が感染リスクおよび重症化リスクが極めて高い患者であることから、プログラム方法について再検討を行う必要がある。現時点では、全てオンラインでの実施を計画しており、感染予防を第一に考え、患者が負担なくプログラムに参加できるプログラムを作成し、倫理承認後、パイロットスタディを実施していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、プログラム用のWeb会議システムを購入する予定であったが、実態調査の結果をもとにオンラインプログラムをより慎重に検討する必要があると判断し、購入を一旦見送った。しかし、プログラム再検討を行った結果、対面と遠隔とを組みわせた形での実施が最適であるとの結論に至り、Web会議システムの購入を再検討していたが、新型コロナウィルスに伴う社会情勢により、購入が保留となり次年度使用額が生じている。複数のWeb会議システムを試用した結果、脆弱性も解消され、接続の簡便性や利便性に優れているzoomの使用を予定しているため、ライセンス購入を進めていく。また、オンラインでの実施に際し、PCやタブレットを保有していない対象者がいた場合を考慮して、貸し出し用タブレット端末とポケットWi-Fiの購入を検討している。 さらに、データ分析の結果、患者自身が身体活動をセルフケアできるような支援の必要性も示唆されたため、身体活動量計を使用したプログラムを計画し、未使用額を身体活動量測定物品(活動量計や解析システム等)購入に充当していくことを検討しているが、1つのデバイスで測定したい項目全てを満たせる物がなく、現在開発中の物品もあったため、購入を保留としていた。患者の負担が少なく、活動量・心拍・SpO2が測定可能なリストバンド型のウエラブル端末を10~15台購入する方向で計画している。
|