インタビューにて明らかになったシルバー人材センター登録者(以下、会員と略す)およびシルバー人材センター組織そのものにおけるSP養成の阻害因子を整理した。 会員のインタビューでは、そもそも軽作業としての就労を希望している会員の場合、SP養成研修のような事前準備が必要な就労は敬遠され、このような機会を自己啓発と考えて取り組むものは少なかった。また社会貢献活動としての医療従事者養成に関心の低い会員の場合は、自ら積極的にSP養成に参加することは少なかった。更に会員の記憶力等の能力的な衰えはフィードバックを必要とするSPにおいてはハードルの高いものとなっていた。 シルバー人材センター職員のインタビューでは、雇用形態の問題が明らかになった。シルバー人材センターの雇用形態は「請負業務・派遣紹介業務」となっており依頼主と会員との業務内容受注の有無により雇用が発生する。つまり、依頼主である大学が会員に直接業務内容は支持できないということである。また、シルバー人材センターでは積極的に高齢者雇用の取り組みを目指していない団体もあり、今回のようなSPとしての闘病・入院経験を持つ会員を積極的に活用する新規事業などへの関心は薄いことがうかがえた。 このため、令和2年に計画した全国調査では、厚生労働省職業安定局高齢者雇用対策課の「生涯現役促進地域連携事業」に取り組んでいるシルバー人材センターを含む実施地域43道府県の労働局職業安定部職業対策課(未実施地域4都県:東京・埼玉・福島・山口を除く)での全国調査に変更した。全国調査のための質問紙素案作成も兼ねて、シルバー人材センターそのものが中心団体として活動している新潟県、愛媛県のシルバー人材センターへのインタビュー調査を計画していた。しかし、全国的な新型コロナウイルス感染の影響で計画実施ができず、質問紙作成後の全国調査までつなげることができなかった。
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