研究課題/領域番号 |
17K19852
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
野間 春生 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00374108)
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研究分担者 |
黒田 知宏 京都大学, 医学研究科, 教授 (10304156)
加藤 源太 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20571277)
杉山 治 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (40586038)
大鶴 繁 京都大学, 医学研究科, 准教授 (60437225)
下戸 学 京都大学, 医学研究科, 助教 (80548412)
松村 耕平 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (80629600)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 社会医学 / 災害支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:以下DMAT)の救援活動を支援するために、DMATが現場で用いる情報共有手段としてのSNSのあり方を研究し、SNSを用いることによるメリットと潜在的課題を明らかにする。さらに、それらを解決するシステムを設計して、試作システムによって効果を評価し、将来に現場で運用可能なシステムへと繋げることを目指す。 DMATは 2016 年に発生した熊本地震の際、隊員同士の情報共有手法としてSNSであるLINEの利用を試みた。事後のDMATの報告会ではLINEでの情報共有が便利であると報告された。一方、多くの情報が一箇所に集中することで、重要なメッセージが埋もれてしまう情報過多の問題も報告された。我々はこの問題を解決するシステムを設計するために、熊本地震の際に出動した京都大学医学部附属病院 DMAT の LINE 会話ログの分析した。特に、分析結果から指示の重要性に着眼し、指示の管理を中心としたシステムを設計した。ここではLINE上の会話から指示を半自動で抽出して管理し、Webアプリケーション上で指示の進捗報告ができるシステムを実装した。さらにこのシステムを災害の場に類似する環境である、学会の学生ボランティアの指示系統に導入して機能を確認した。 さらに災害救援の場における情報伝達の状況を理解する為に、京都大学医学部附属病院で実施された平成29年度災害対策訓練において、災害対策本部や救命の現場の各部署の担当者がトランシーバで交わした会話を観察・分析した。その結果、指示とその応答が大半のやりとりであったが、トランシーバという半二重通信であることを原因として、応答の遅れのため確認が混乱する場面が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常のLINEグループのUIでは、参加者からのメッセージが発信される毎に過去のメッセージが画面外にスクロールアウトされる。災害現場の場では、“**に集合して下さい”という指示に対して、グループメンバーが“了解”というメッセージで、応答するならば、参加者の数だけ投稿され,当初の指示メッセージが表示外に追いやられる恐れがある。これに対して、これまでの提案手法では、“指示”というタグを付けてメッセージをグループに投稿すると、自動的にこのメッセージを指示内容と考え、LINE外部の指示管理サーバに転送する。参加者は、指示が発せられたことを確認すると、指示管理サーバの指示一覧から当該指示を選択し、その指示に応答すると応答済みリストに計上される。これによって、LINEグループの指示を認識しうる範囲内に残したまま、メンバの応答状況を確認できる仕組みを実装した。本提案システムを、学会の学生ボランティア内で試用し、効果を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
LINEを拡張した指示管理システムの機能は確認出来たが、これを現場で運用するには、DMAT関係者、ならびに、学会運営の場での運用試験の結果、音声等による入力方法の可能性や、指示対象者を指示単位で管理する機能が求められることが分かった。これらについて、現状のシステムを拡張して対応する手法について開発を進め、同様に現場での試用を通して有効性の評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地での調査に変えて、先に京都大学医学部附属病院内で災害対応訓練状況の調査としたためである。H30年度に必要な調査を実施する予定である。
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