研究課題
本研究では、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:以下DMAT)の救援活動を支援するために、DMATが現場で用いる情報共有手段としての SNSのあり方を研究し、SNSを用いることによるメリットと潜在的課題を明らかにする。さらに、それらを解決するシステムを設計して、試作システムによって効果を評価し、将来に現場で運用可能なシステムへと繋げることを目指す。DMATは 2016 年に発生した熊本地震の際、隊員同士の情報共有手法としてSNSであるLINEの利用を試みた。事後のDMATの報告会ではLINEでの情報共有が便利であると報告された。一方、多くの情報が一箇所に集中することで、重要なメッセージが埋もれてしまう情報過多の問題も報告された。我々はこの問題を解決するシステムを設計するために、熊本地震の際に出動した京都大学医学部附属病院 DMAT の LINE 会話ログの分析結果から指示の重要性に着眼し、LINEで交わされる会話の中から、指示メッセージのみを半自動的にメモとして抽出する仕組みを設計し、開発した。さらに災害救援の場における情報伝達の状況を理解する場として、京都大学医学部附属病院で実施された平成30年度災害対策訓練においても、災害対策本部や救命の現場の各部署の担当者がトランシーバで交わした会話を観察・分析した。その結果、トランシーバで交わされた指示とその結果としての行動の間に欠落が生じていたことが確認され、さらに客観的に会話の質について評価した。
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