研究課題/領域番号 |
17K19855
|
研究機関 | 広島文化学園大学 |
研究代表者 |
中村 哲 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (40207874)
|
研究分担者 |
翠川 裕 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10209819)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 台風災害 / 水系感染症 / 水質分析 / フィリピン / レイテ島 / 住血吸虫症 |
研究実績の概要 |
本年度は2月28日から3月6日にかけて現地調査を実施した。レイテ島のタクロバン市にある東ビサヤ地域中央病院の災害対策部およびパロ市にある住血吸虫症対策研究病院の協力を得て、2013年にヨランダ台風の影響を受けたレイテ島とサマール島地域の飲料水源の質を評価した。この調査は同台風による被害直後に実施した場所での水のサンプル結果と比較することを目的とした。 水質分析は迅速乾式化学スリップ試験キットを用いた以下の6項目:アンモニウム含量およびアルカリ度、pH、硬度(CaCO3)、硝酸塩、亜硝酸塩、また大腸菌および大腸菌群、ブドウ球菌について検水1ml中の数量について濾紙培養法を用いて測定した。分析は全て現地で実施した。 結果は4年前と同じ6つの水源から合計7つの水試料を得た。今回の分析から、レイテ島タナウアン郡のカンパリサーラ集落とピカス集落の2か所の管井戸およびレイテ島に隣接するサマール島のバセイ町の管井戸の水質は、台風被災直後に収集された水質データと比較して化学的にも生物学的にも優れていた。また、タクロバン市の水道水源とタクロバン市病院の貯蔵水は生物学的に安全であるとみなされた。しかし、バセイ町の病院の水道水源に大腸菌群が多く、塩素処理が必要であった。今回採取した試料の水質は、ヨランダ台風直後の同じ採取場で採取された試料と比較して清潔であった。このことから、災害直後の地下水はこの地域の日常とは異なり非常に汚染されていたと推察された。 本年度の調査結果の一部はアジア・太平洋地区災害医学会(2018年10月神戸市)等でこれらの施設の研究者と連名で発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の現地調査前に予定していたカウンターパートの一つであるレイテ島タクロバン市にある東ビサヤ中央病院(East Visayas Regional Medical Center: EVRMC)に共同研究が同病院とフィリピン保健省(Department of Health: DOH)に受け入れられ研究の開始が若干遅れた。一方、もう一つの現地研究カウンターパートである、パロ市の住血吸虫症対策・研究病院(SCRH: Schistosomiasis Control and Research Hospital)と次年度の研究連携が可能となった。これらの施設は共にフィリピン国立の病院および疾病対策・研究施設であり、現地での研究遂行の体制は整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度では住血吸虫症対策研究病院(SCRH)の研究部との連携をさらに強化し、住血吸虫媒介貝の現地パイロット研究地区での分布状況を把握する。同時にヨランダ台風災害前後での住血吸虫症の病院外来での受療数等の比較によるインパクトを検証する。この検証にかんしては特にSCRHの疫学部および外来診療部門、EVRMCの外来診療部門・災害対策部の協力を得て、質問紙による調査を実施する。この方法は、レトロスペクティブではあるが、研究主題の巨大台風が住血吸虫症に与えたインパクト評価に寄与する重要な基礎データとなる。 今後はさらに同媒介貝の過去の分布状況に関わる記録・地図や文献等を収集し、過去の台風被災と照らし合わせて変化を検証する。また前述のパイロット研究地区での継続的な共同研究の支援を通じて住血吸虫症対策監視に関わるシステムの導入の可能性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究費の執行が7月以降であったこと、および本年度に予定をしていた現地調査において調査が乾季のみに限定されたこと、研究代表者のみの出張旅費を使用したこと、また現地調査において車両の借り上げ費用および謝金の支出が無かった事が主な理由である。 この内車両の借り上げ費と謝金を書いたことに関しては研究カウンターパートとなった東ビサヤ中央病院(EVRMC)の車両と運転手および同病院災害対策部の職員がボランティアとして研究に参加してくれたためであった。 次年度はEVRMCに加え住血吸虫症対策・研究病院(SCRH)との雨季および乾季での媒介貝の現地調査実施する。そこでは両病院での外来を対象とした調査票による研究をも実施することから、本年度で執行できなかった謝金・その他の支出が発生する。また、それぞれの機会に研究主任および研究分担者、研究協力者を含め3名以上の渡航を行う計画である。
|