研究課題/領域番号 |
17K19860
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
駒込 理佳 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (40414312)
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研究分担者 |
三好 正浩 北海道立衛生研究所, その他部局等, 主査 (50414321)
山口 宏樹 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (50777836)
伊東 拓也 北海道立衛生研究所, その他部局等, 主査 (90414309)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 蚊 / ブニヤウイルス |
研究実績の概要 |
研究代表者らは北海道に生息する吸血昆虫の保有するブニヤウイルスの調査において、新たなブニヤウイルス遺伝子を1種類の蚊より検出した。この蚊はヒトへの吸血嗜好性があるため、宿主域や病原性など詳細なウイルスの性状解析と分布域の調査が急務と考えられる。今年度はウイルスの分布地域及びヒトへの病原性について検討した。 分布地域に関しては、2014年および2015年に加え、2017年に札幌市内で採取したボウフラを飼育羽化させた蚊において、高率で新規ブニヤウイルスが検出されたため、継続してウイルスが維持されている事が確認された。また、2017年に本州および九州に設置したオビトラップにおいて、トラップ内の卵やボウフラから飼育羽化させた蚊の中で、これまで道内で検出されていた蚊とは別種の蚊からも新規ブニヤウイルス遺伝子が検出されたため、国内の蚊においてこのブニヤウイルスが広範囲に存在する可能性が示唆された。 ウイルスの病原性に関しては、ヒトへの病原性を持つウイルスはヒトを含む哺乳類由来の培養細胞に細胞変性効果を持つものが多いことから、培養細胞を利用して病原性の有無の推測を行った。ウイルス陽性検体をVeroE6、293細胞など7種類の哺乳類由来培養細胞に添加して培養し、細胞変性効果を観察したが、形態変化は認められず、細胞から遺伝子を抽出してウイルス遺伝子の検出を試みるも検出されなかったため、細胞内でのウイルスの増殖も観察できなかった。これらの結果から、新たなブニヤウイルスがヒトへの病原性を持たない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、分布地域に関しては、北海道において新たなブニヤウイルスが継続的に検出され、また、北海道のみならず本州や九州等広範囲に分布することが示唆されたこと、また、ヒトへのウイルスの病原性について培養細胞株を用いて検討し、現時点では病原性を持たない可能性を示す結果が得られていることから、概ね順調に進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルスの分布地域に関しては、本州、九州、及び北海道での分布に加えて、今後は四国やこれまでに採取した地域とは別の地域での検体採取も試み、より詳細な分布を調べる。また、ウイルス遺伝子の塩基配列をより長い領域まで解析して、分布地域毎で比較し、地域特性の有無についても調べる予定である。また、検体を集積して、ウイルス遺伝子の分節の末端に共通する塩基配列を利用したPCR法等により、現在判明しているL鎖以外の遺伝子についても解析を進めていく。培養細胞を利用したウイルス病原性の検索に関しては、更に細胞の種類を増やし、増殖可能な細胞株の探索を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初はウイルス遺伝子配列解析において、長い領域を解析して比較する予定であったが、ウイルス量が少なく、短い配列しか解析出来ない試料も存在した。そのため、逆転写酵素及びPCR酵素でウイルス遺伝子を効率的に増幅できる組み合わせを検討した後に大量の検体を解析することとした。従って、これらの酵素及び塩基配列解析用の試薬の購入を延期せざるを得なかったため。 (使用計画) 遺伝子解析に最適な組み合わせを検討し、逆転写酵素、PCR酵素、塩基配列解析試薬等の試薬および器具を購入する。また、国内各地域における検体採取及び学会に参加して情報収集を行うための旅費に使用する。研究成果発表のため論文投稿の校閲料、投稿料に充てる。
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