研究課題
①尿酸関連遺伝子とパーキンソン病の関連解析:我々は痛風遺伝子の頻度の高いSNPであるQ141K変異がパーキンソン病の発症年齢を有意に遅延させることを、日本人のパーキンソン病1015例の解析により、世界に先駆けて報告した。本研究ではABCG2機能に基づくパーキンソン発症年齢への影響の評価を目指した。さらに、新規尿酸関連遺伝子を対象としたパーキンソン病の関連解析を実施した。新規尿酸関連遺伝子の多くは、我々の研究室において豊富な情報がある状況にある。そのため、新規尿酸関連遺伝子とパーキンソン病の関連解析を世界に先駆けて実施できる体制にあり、ABCG2以外にパーキンソン病の発症年齢に関わりうる尿酸関連遺伝子の同定を目指した。②尿酸を含む環境因子に着目したパーキンソン病の国際共同研究:我々は、尿酸を含む環境因子に着目したパーキンソン病の国際共同研究である「COURAGE-PD」プロジェクトに参加して、尿酸・痛風関連遺伝子の観点からパーキンソン病の保護的作用についても検討した。また、それを含めて海外との関連の共同研究を実施しており、今後国際共同研究の成果が得られる見込みである。③パーキンソン病の分子遺伝疫学研究のための研究リソースと研究基盤の整備:①、②の研究を通じて、日本発でパーキンソン病の分子遺伝疫学研究のための研究リソースと研究基盤を本研究期間中にさらに整備できた。④尿酸の神経保護的作用の検証とパーキンソン病のゲノム個別化予防に向けた研究:①~③に示した国内外の共同研究の成果を総合して、パーキンソン病の発症年齢などに影響を与える遺伝子とその分子病態への関与について評価できる研究基盤が構築できた。尿酸関連遺伝子に着目した新規の予防因子を明らかにして、それらの知見をもとにしたゲノム個別化予防の観点から、個人差に応じたより適切な早期予防法の開発に資する成果となった。
2: おおむね順調に進展している
①~④の研究計画において、尿酸関連遺伝子の分子遺伝疫学的解析を実施することにより、遺伝子の観点から尿酸の神経保護的作用について検討を加えることができた。本研究により上記の基盤が整い、パーキンソン病の予防につながる成果を今後とも目指せる研究体制が構築できた。
パーキンソン病の国際分子疫学コンソーシアム(GEOPD)のメンバーとして申請者は過去5年間以上活動しており、理想的な国際共同研究体制が確立できる状況にある。特に、尿酸の神経保護的作用の観点から、痛風・尿酸の大規模遺伝子解析で見出された遺伝子座のデータは、パーキンソン病を含む神経疾患の予防の観点からの研究においても重要であり、GEOPDにおける国際共同研究の推進に資することが期待できる。
結果発表の為の論文掲載等の支払いが年度をまたがり、次年度使用が必要になった為。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
BMC Med Genet.
巻: 19 ページ: 96
10.1186/s12881-018-0583-z