研究課題/領域番号 |
17K19869
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
宇良 千秋 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60415495)
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研究分担者 |
岡村 毅 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10463845)
山崎 幸子 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (10550840)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 稲作ケア / 農業ケア / 認知症 / 統合失調症 / 社会的包摂 / 精神的健康 / パーソナルリカバリー / 共生 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,主に3つの研究成果が得られた。 成果1“Long-term effects of Rice-farming care on cognitive function and mental health of elderly people with cognitive impairment”;平成28年度から稲作ケアプログラムに参加している8名のMCI・認知症の人を対象に、プログラムの長期的効果を検証した結果、事後のMMSE得点、精神的健康度が改善していたが、半年後のフォローアップ時にはこれらの機能が低下していた。プログラムがない冬期の関わりの重要性が示唆された。 成果2“A rice-farming activity for people with mental illness”;グループホーム在住で統合失調症をもつ男性5名を対象に、地域住民や認知症の人たちと稲作ケアプログラムに参加した効果を評価した結果、意欲・自発性の向上、生活習慣の変化などがみられた。当事者中心の精神医学が目標としている「主観的回復(パーソナルリカバリー)」を獲得する手段として共生による農業ケアが有効であると示唆された。 成果3「認知機能障害あるいは精神疾患のある人の共生基盤としての福祉と農業の融合によるケアに関するケース研究」;認知機能障害・精神疾患の人に農業プログラムを実施している6つの事業所を調査し,福祉と農業の融合によるケアの施策化の方法を検討した。分析の結果、①事業には4つのタイプがあること、②事業実施に至る要因として、経路依存(地域の有力な資源としての病院・施設)、同級生のネットワーク、③事業の継続性に関わる要因として、自治体の支援、制度対象化、地域資源が有効であること、④自治体の主体的関与、事業実施費用、地域住民の参加と理解、土地の提供などが課題であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力機関である川室記念病院や上越市役所高齢者支援課・福祉課との協力関係が良好であり、研究活動が予定通りに進められている。また、学会発表や論文発表などの成果も順調に出ている。分担研究者および協力研究者と毎月1回研究会を開催しているので,その都度進捗状況を確認し合うことができ,風通しの良い研究組織になっていることが良い成果をもたらしていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間最終年度となる今年度は、認知症高齢者を対象とした稲作ケアプログラムの効果を、比較対照群を設定したより質の高い研究デザインで検証する予定である。現在、量的データの収集が完了したので、今後、インタビューなど質的データの分析を行う予定である。また、認知機能障害をもつ高齢者の社会的包摂および地域との共生を進めるために,広く一般の地域在住高齢者や障害者を含めた住民とともに稲作ケアプログラムを実施し,医療モデルによるプログラムから地域モデルによるプログラムへの可能性を検討する。さらに,全国各地で実践しやすい農業ケアの方法を開発するために,引き続き国内外のグッドプラクティスの事例を集め、いくつかの地域に出向いてインタビュー調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、研究協力機関の川室記念病院が上越市からの補助金を獲得することができたので、研究代表者の旅費をその補助金から一部補填してもらうことができた。そのため、当初の予定よりも旅費の支出が抑えられた。研究期間最終年度となる今年度は、稲作ケアプログラムの効果を検証するためにインタビューなど量的データを収集する予定なので、テープ起こしや質的分析のための費用が必要である。また、国内外のグッドプラクティスの事例を集めるための旅費が、主な経費として考えられる。
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