研究課題/領域番号 |
17K19870
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
牧迫 飛雄馬 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70510303)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 介護保険 / 健康長寿 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、地域在住高齢者を対象とした大規模なコホート研究(各種の実測データ含む)を実施したフィールドにおける要介護の発生(認定)状況ならびに介護費利用状況を分析可能とすべく、連結データシステムの構築を実施した。このシステムを活用して、身体的フレイルを有することが、将来に利用する介護給付額にどの程度の影響を及ぼすかを検証した。機能健診に参加した高齢者のうち、29か月間の介護保険による公的サービスの利用有無が追跡可能であった4539名を対象に分析した結果、追跡29か月間で新規の要支援・要介護を発生した者の割合は5.3%であり、そのうちで介護サービスを利用した者は64.0%であった。追跡期間中における1人当たりの介護給付額を比較すると、フレイルに該当した者では健常の約20倍の介護給付額が生じていた。75歳以上でより顕著な差額が生じており、75歳以上における1人当たりの介護給付額は健常とフレイルでは29か月間で1人当たり約20万円の差額であった。身体的フレイル高齢者では将来に介護保険サービスによる介護給付費を多額に必要となることが確認され、社会保障費を逼迫する要因となり得る身体的フレイルを予防することの重要性が示唆された。 さらに、追跡期間を60か月(5年間)と設定し、追跡期間中に要支援・要介護の認定を受けた後に死亡した113名を分析した結果、認定を受けた年齢は平均で80.4±6.4歳であり、認定から死亡までの期間は平均で15.4±11.9か月、亡くなるまでに介護保険を利用した月数は11.7±10.7か月であった。認定を受けた年齢と認定後の死亡までに利用した介護保険利用額には有意な関連は認めず(r=0.07)、認定から死亡までの期間の長さと介護保険利用額は有意な正の相関関係であった(r=0.72,p<0.01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では概ね当初計画に準じて、介護保険サービスの利用状況を実測データなどと連結させ、要介護認定後の介護サービス利用額の縦断的な分析が可能となるシステムの構築を進めている。医療情報に関しても、特定の疾患については、健診実測データとの連結が可能な状況となっている。 しかしながら、所属研究機関の変更に伴い、本研究課題での分析の主体となるデータシステムへアクセスできる環境にも変更が生じたため、分析作業に時間を要している。これらの状況より、本研究課題は概ね当初計画通りに進捗はしているが、計画を上回るほどの進捗は困難な状況であるものの、平成30年度については引き続き予定された計画に準じて進行していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、実測データと連結させた介護サービス利用額に関するデータを用いた詳細な分析と得られた成果の論文公表のための作業を計画している。また、分析の基となるデータベースは、追跡の最新1年分を平成30年11月頃に追加更新予定であり、これらの更新作業にもシステム構築に関連する協力者との連携を密にとり、進めていく。構築されたデータベースを基に、介護サービス利用額や医療費をアウトカムとした分析作業を実施し、公表に向けた討議を重ね、質の高い論文として公表できるように各種作業を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の所属研究機関の変更に伴い、当初に計画していた使用予定よりも、執行手続きの移行やシステム構築作業に時間を要したため、一部の使用額を次年度以降に持ち越したために、次年度使用額が生じた。ただし、次年度に向けた準備は着実に進めることができており、所属機関が変更した後も研究協力者の支援を得ることができており、分析システムの構築にも支障ない状況である。
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