研究課題
「ストップ認知症プロジェクト」として、軽度認知症状態から認知症(特にアルツハイマー型認知症)に移行するメカニズムのひとつとして、アミロイドβの排泄機構に着目し、その活用による認知症予防を目的とした研究をおこなっている。アルツハイマー病はアミロイドβの異常な蓄積が原因の1つであるが、神経細胞内からアミロイドβを排出する際にオートファジーは深く関わっている。通常の大きさなら短期間で分解され排出されるが、正常なアミロイドβよりも大きな異常なたんぱく質になると、排出されずに蓄積する。一方、高密度リポたんぱく(HDL)を含むアポリポたんぱくA-1はアルツハイマー病の発症に関与するとされている。HDL粒子の大きさは病態によって変化するが、その病態生理学的意義は不明である。今回、軽度認知障害、およびアルツハイマー型認知症におけるHDLのサブクラスの関連を解析した。20名のアルツハイマー型認知症、17名の軽度認知障害、および17名の正常コントロールにおいて、HDLサブクラスをLipoprint Systemを用いて電気泳動により分離して測定し、炎症のマーカーである好中球/リンパ球比も測定した。その結果、サイズの小さいHDL粒子の血中濃度は軽度認知症のグループでコントロール群より有意に高かったが、HDLの血中濃度は両群で差はなかった。炎症を表す好中球/リンパ球比は軽度認知症群で高い傾向にあったが、有意差はなかった。アルツハイマー型認知症群と正常コントロールでは、HDLサブクラスにも好中球/リンパ球比にも差は認められなかった。以上の結果より、HDLサブクラスが軽度認知症の進展に関与する可能性がある。神経細胞を取り巻くタンパクや粒子の大きさがその排泄に関連して蓄積に寄与し、認知症の進展に寄与する可能性も考えられる。
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