研究実績の概要 |
目的:我々は頸動脈プラーク進展がその後の循環器病発症リスクであることを初めて示した。頸動脈プラーク進展に関するリスクスコアはまだ確立していない。そこで、頸動脈プラーク進展のリスクスコアを開発した。 方法:循環器病既往のない4724名(平均年齢59.7歳)を対象に、健診に合わせて頸動脈エコー検査を実施し、両側の計測可能な領域の頸動脈(総頸、分岐部、内頚・外頸動脈)を計測した(1994年4月~2001年8月)。頸動脈プラークは総頚動脈最大内膜中膜複合体厚が1.1mm超と定義した。ベースライン時調査プラーク有(1044名)、追跡不能(167名)、データ欠損(2名)を除外し、3511名を2年毎に頸動脈エコー検査を実施し、2016年3月まで追跡した。循環器病危険因子で調整されたCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 結果:38454人年の追跡期間中に1771人の頸動脈プラーク進展がみられた。プラーク進展に対する各危険因子のスコアは以下の通りであった。年代が30~80歳代の順に0, 2, 4, 6, 9, 11点、女性で‐1点、収縮期血圧が<120, 120-159, ≧160mmHgの順に0, 1, 2点、総コレステロールが<160, 160-239, 240-279, ≧280mg/dLの順に0, 1, 2, 3点、HDLコレステロールが<35, 35-59, ≧60mg/dLの順に2, 0, -1点, 過体重、喫煙で1点、糖尿病で2点であった(C統計値0.647:95%CI 0.629-0.665)。頸動脈プラーク進展リスクスコアが2点と10点の人は、10年後に頸動脈プラーク進展となる予測確率が夫々27%、62%であった。 結語:古典的リスクを用いて頸動脈プラーク進展のリスクスコアを開発した。健診や日常外来で頸動脈エコー検査をせずに簡便にプラーク進展の10年後予測確率を推計できる。
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