研究課題/領域番号 |
17K19874
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
本村 和嗣 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 課長 (60450558)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | NGS解析による準種解析 / ノロウイルスGroupI / ノロウイルスGroupII |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代型ゲノム解析装置を用いて、自然環境(河川、下水)、および、自然環境周辺に位置するヒト集団における集団食中毒事例について、ノロウイルスのゲノム解析情報を収集し、遺伝子型の分布状況の比較や新変異株の検出について解析する。これらの情報は、ノロウイルスのヒト集団における集団発生予測の基盤情報になることが期待される。初年度は、より迅速かつ簡便な解析プログラムを作成し、既存のものと結果を比較することで精度をあげる試みを行った。今年度は、2009年に大阪府内で発生したノロウイルスGI陽性食中毒B事例(以下 B事例)を対象に{料理喫食者(n=7)}、その解析プログラムを使用して調査した。糞便試料を出発材料とし、ウイルスRNA抽出、逆転写反応後、カプシド遺伝子シェル領域(300bps)をPCRで増幅した。今回は、MiSeq (illumina社) を用いて、遺伝子増幅産物の配列情報を取得した。(i) 220,622配列(約6.0×10の7乗 塩基)を対象とした。(ii) 本事例では、B事例では、7症例中5症例より、GI.1、GI.3、GI.型別不能の複数の遺伝子型が検出された。7症例中5症例は、GI.1が優位に高かった(61-79%)。1症例はGI.3、残り1症例は、GI.型別不能が優位に高かった。 (iii) カキ等の二枚貝の喫食は確認されなかった。昨年度解析したノロウイルスGII陽性食中毒A事例(以下 A事例)(6症例)では、6症例中5症例より、GII.2とGII.4の複数の遺伝子型が検出されたことから、ノロウイルスは、遺伝子群に関係なく、混合感染することがわかった。ノロウイルスは、異なった遺伝子型の共感染により、キメラウイルスが新生すると考えられている。新流行株の新生の機序を考える上で、重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私共は、日本における新型変異株ノロウイルスの出現による流行への注意監視のため、臨床検体や河川などの環境検体より、ノロウイルス感染症の新型変異株の早期検出を試みたい。初年度は、既存の配列解析プログラムを、迅速・簡便化のため、配列解析プログラムを改良した。今年度は、、配列情報を解析する小型ゲノムサーバーを購入したため、多検体の解析を遂行することができた。昨年度、解析したノロウイルスGII陽性食中毒事例(6名分)を新たに解析し、ノロウイルスGI陽性食中毒事例(7名分)を加えて解析した。症例の遺伝子型の比率は、頻度が様々であった。喫食した食品汚染の度合い依存する可能性、また、宿主側のNoV既感染歴に影響されると考えられる。ノロウイルスGI陽性食中毒事例では、感染源が特定されなかったが、GIの複数の遺伝子型が検出されており、NoVは遺伝子型群に関係なく、混合感染することが示唆された。A事例、B事例は、同一食事による食中毒事例であったが、遺伝子型の頻度は多様であった。喫食した食品汚染度に依存する可能性や宿主側のノロウイルスに対する防御因子の関与が考えられる。A事例では、GII.4 亜株分別不能株、 B事例では、GI 遺伝子型分別不能株が検出された。ノロウイルスは、GIおよびGIIにおいて、未知の遺伝子型が存在する可能性がある。症例の遺伝子型の比率は、頻度が様々であった。喫食した食品汚染の度合い依存する可能性、また、宿主側のノロウイルス既感染歴に影響されると考えられる。ノロウイルスGI陽性食中毒事例では、感染源が特定されなかったが、GIの複数の遺伝子型が検出されており、ノロウイルスは遺伝子型群に関係なく、混合感染することが示唆された。ノロウイルスは、異なった遺伝子型の共感染により、キメラウイルスが新生する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の問題点は、(1)配列情報を解析するコンピューターの購入が遅れ、市販されている一般のコンピューターで解析をしたため、解析数に制約があり、多くの検体を解析できなかった(2)自然環境(河川、下水)の採取が大変、困難であること、であったが、 今年度、小型ゲノムサーバーを購入したため、(1)の問題は解決した。(2)自然環境(河川、下水)の採取であるが、大阪府内で調整をすすめ、採取への協力を得た。最終年度は、下水環境中のノロウイルスの遺伝子型の分布状況を調査検討を行う。初年度、迅速・簡便に改良した配列解析プログラムを用い、今年度、購入した小型ゲノムサーバーを用いて、解析にあたる。ノロウイルス流行株予測の系の構築のため、次世代型ゲノム解析装置を用いて、自然環境(河川、下水)、および、自然環境周辺に位置するヒト集団の(集団食中毒事例)ノロウイルスのゲノム解析情報を収集し、自然環境、ヒト個体、ヒト集団内に存在する新変異株の検出を実施する。ノロウイルスのゲノム解析情報を比較検討することで、自然環境、ヒト個体、ヒト集団内に存在する新変異株の早期探知が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)申請時より、小型ゲノムサーバーの性能があがり価格見直しのため、基本価格が高くなった。 (2)最終年度は、関係機関と協議し、下水検体の調達が見込まれ、下水検体の解析を行うため、2018年度は、環境水を濃縮する限界ろ過機を購入した。申請時より、性能があがり価格見直しのため、基本価格が高くなった。
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