研究実績の概要 |
本研究では、次世代型ゲノム解析装置を用いて、自然環境(河川、下水)、および、自然環境周辺に位置するヒト集団における集団食中毒事例について、ノロウイルスのゲノム解析情報を収集し、遺伝子型の分布状況の比較や新変異株の検出について解析する。これらの情報は、ノロウイルスのヒト集団における集団発生予測の基盤情報になることが期待される。初年度は、迅速かつ簡便な解析プログラムを作成し、2009年に発生したノロウイルスGII陽性食中毒事例の準種解析を行った。6検体中4検体で、GII.2とGII.4 2006bの混合感染が認められた。二年度は、2009年に発生したノロウイルスGI陽性食中毒事例を対象に、その解析プログラムを使用して調査し、7検体中5検体より、GI.1、GI.3、GI.型別不能の複数の遺伝子型が検出された。最終年度は、食中毒事例が発生した近くにある下水処理場から採取された下水試料の解析を行った。GIについて、2009年12月、2010年1月、3月、4月、5月、2011年1月、2月、3月、4月、5月分の計10検体。2009年11月、12月、2010年1月、2月、3月、4月、5月、11月、12月、2011年1月、2月、3月、4月、5月、6月分の計15検体。濃縮された下水試料を出発材料とし、ウイルスRNA抽出、逆転写反応後、GIとGIIのカプシド遺伝子シェル領域(300bps)をPCRで増幅した。今回は、MiSeq (illumina社) を用いて、遺伝子増幅産物の配列情報を取得した。全部で、990,556配列(約1.6×108塩基)取得した。2009年12月、2010年1月、3月のGIの解析のみ、終了している。 2009年12月は、GI.1が100%、2010年1月は、GI.1が88.2%、GI.3が11.8%、2010年3月は、GI.1が98.8%、GI.3が1.2%検出されていた。二年度に解析した、GI陽性食中毒事例でも、GI.1とGI.3が検出されており、下水環境中の遺伝子型分布と一致していた。2020年2月より、新型コロナウイルス感染症の検査対応のため、準種解析が全て終了しておらず、現在、解析を進めている。
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