研究課題/領域番号 |
17K19880
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 準一 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60280880)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 妊娠高血圧腎症 / ゲノムワイド関連解析 / HLA / NIMA / 非遺伝母組織適合性抗原 |
研究実績の概要 |
妊娠高血圧腎症(Preeclampsia: PE)は原因不明の多因子疾患であり、母体・胎児死亡の原因として、周産期医学上の大きな課題となっている。 最近の研究により、妊婦と胎児の間にはお互いの微量の有核細胞が長期間生着する母子間マイクロキメリズムが成立しており、胎児のNIMA(非遺伝母組織適合性抗原)に対する免疫学的寛容が、その後の世代の妊娠成立に大きな影響を与えることが明らかになった。本研究は、三世代コホートのPE患者家族のサンプルから、高解像度ハプロタイプ解析を行い、NIMA免疫寛容に基づいたHLA遺伝子群の適合度を探索することで、PEの遺伝的要因解明の端緒を切り拓くことを目的としている。具体的には、祖父母―妊婦―夫―児のHLA領域をタイピングし、PE発症リスクと妊婦と児(夫)のHLAハプロタイプ適合度を探索する。 2020年度は、東北メディカル・メガバンク機構の推進する三世代コホート参加者を対象として、HLA-G領域にプライマーを設計し、罹患妊婦および対照妊婦と児の組み合わせにおいて、長鎖型シークエンサーによる情報解析を進めた。その結果、妊娠高血圧腎症の母児ペアに特徴的にみられる新規対立遺伝子を発見した。加えて、妊娠高血圧腎症とHLA-G*01:01:01:01対立遺伝子の下流領域内に存在するTストレッチ(チミンの繰り返し:本研究では17~43 bp)との間に関連性を見出した(Sci Rep. 2020 Nov 18;10(1):20027. doi: 10.1038/s41598-020-77081-3.)。さらに妊婦、夫、児、祖父母のいわゆるヘプタファミリー161組(1127検体)の末梢血からDNAを抽出、ジャポニカアレイによるSNPスキャンを完了した。HLAタイピングを進めNIMAの特定、妊婦の周産期情報の整理を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HLA領域のアレイ解析・シークエンス解析には先端的な情報解析技術が必要であり、研究者の移動の制限により、その開発に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ヘプタファミリーのHLAタイピング、NIMAの特定を進め、妊婦の妊娠高血圧罹患との関連性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により研究者の移動制限等があり、予定していたシークエンス解析、HLAタイピングが遅れたため、繰り越し分はこれらの解析費用に充てる。
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