妊娠高血圧腎症(Preeclampsia: PE)は、遺伝環境相互作用による原因不明の多因子疾患であり、母体・胎児死亡の原因として、周産期医学上の大きな課題となっている。また、本疾患に罹患した母児の長期予後をみると、その後の生活習慣病の発症リスクが高いことが、多く報告されている。 最近の研究により、妊婦と胎児の間にはお互いの微量の有核細胞が長期間生着する母子間マイクロキメリズムが成立しており、胎児のNIMA(非遺伝母組織適合性抗原)に対する免疫学的寛容が、その後の世代の妊娠成立に大きな影響を与えることが明らかになった。 本研究は、東北メディカル・メガバンク機構の推進する三世代コホートの妊娠高血圧腎症患者家族のサンプルから、高解像度ハプロタイプ解析を行い、NIMA免疫寛容に基づいたHLA遺伝子群の適合度を探索することで、妊娠高血圧腎症の遺伝的要因解明の端緒を切り拓くことを目的としている。具体的には、祖父母―妊婦―夫―児のHLA領域を、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析後に精緻にタイピングし、妊娠高血圧腎症発症リスクと妊婦と児(夫)のHLAハプロタイプ適合度を探索する。
2022年度は、東北メディカル・メガバンク機構の推進する三世代コホート参加者を対象として、妊婦、夫、児、祖父母のいわゆるヘプタファミリー161組(1127検体)の末梢血DNAを用いたジャポニカアレイ解析結果を検証した。さらに、それらをもとにHLAタイピングを確認検証し、NIMAの特定、妊婦の周産期情報との関連解析を進めた。
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