研究課題
申請者は、これまでのマウスを用いた研究を通して、授乳期の乳腺組織内には多種多様な微生物が存在していることを、メタゲノム解析を駆使することで明らかにしてきた。また、それらの大半は、乳牛の乳房炎の起因菌として知られている黄色ブドウ球菌などの病原性微生物とは異なる種であり、腸内に常在する微生物も多数検出された。マウスの乳腺組織内におけるこれらの微生物の存在は、乳汁移行抗体(IgA)産生を主とする乳腺免疫の発達にも深く関与していることが予想されたが、乳汁移行抗体(IgA)を産生する形質細胞を乳腺組織内に遊走させるケモカインCCL28の発現や、分泌されたIgAの乳腺房内への輸送に関わるPigRの発現は、無菌マウスの乳腺でも十分に検出されたことから、乳汁微生物は乳汁移行抗体産生を主とする乳腺免疫機能を促す存在ではなく、主として、乳汁を介して母子移行される存在として、子に大きな影響を与えていることが示された。本研究では、マウスを通して得られた結果の普遍性を実証すべく、授乳期のヒトの乳汁を用いた解析をさらに実施した。東北大学の倫理審査委員会の承認を得た上で採取したヒトの乳汁(5サンプル)内に存在する微生物を、16S rRNA遺伝子を指標としたメタゲノム解析に供した結果、計359種の微生物が検出された。その多くは、Lactobacillales目、Vacillales目、Bacteroidales目に分類された。コントロールとしてウシの乳汁も同様に解析した結果、計1788種の微生物が検出され、ヒトの乳汁とは大きく異なる微生物環境が発達していることが示された。マウス、ウシ、ヒトといった種を超えたメタゲノム解析を通して、種特有の乳汁微生物が存在しており、それらが哺育を介して子に移行することで、子の微生物環境形成に影響を与えている可能性が強く示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 4件)
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