研究課題/領域番号 |
17K19885
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 誠 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (60166931)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 自律神経 / スマートフォン / クラウド / 映像脈波 / ストレス評価 / インターネット / 自律神経疾患 / 非接触計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はリアルタイムに変化する自律神経世界地図システムを開発することである.すなわち,スマートフォンのビデオカメラから得られる映像脈波情報に基づき,スマートフォンが利用可能な全世界の人々の自律神経系指標を,他のストレスや体調に関係するアンケートとともにオンライン・リアルタイムにクラウド上に収集・解析し,評価結果を各利用者にフィードバックするとともに,世界地図上で匿名化した全員の評価結果を同時に表示・共有するツール(自律神経世界地図)を開発することである.これにより,巨大データ収集とその利用が自動化される. このような自律神経世界地図は,その時点における世界中の自律神経系疾患や精神的ストレスに悩む人々の分布とその度合いを表すものであり,各地域の環境(時間帯・天候・衛生・経済・治安・災害など)の変化に応じて時々刻々と変動するものと思われる.これは世界規模のリアルタイムのコホート分析ツールでありながら,ごく普通のカメラ付きスマートフォン以外には特別なセンサや検査装置を全く必要としない. 上記システムの基盤を構築するために,昨年度において,プラットフォームに依存しないクラウド型映像脈波解析システムのプロトタイプを開発した.これにより,ユーザーは本クラウドサイトにアクセスし,映像ファイルをアップロードすることにより,サイト内解析エンジンが映像脈波を自動解析する.しかしこれまでは,映像脈波抽出対象領域の設定を手動で行う必要があった.これに対し本年度ではこれを自動化した.すなわち,Viola-Jones 法による顔検出アルゴリズムと,Nelder-Mead法による肌色部分抽出に関する複数パラメータの最適化を組み合わせることにより,実時間での顔の自動追尾を実現した.これにより,本システムの利便性が格段に向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,スマートフォンのビデオカメラから得られる映像脈波情報に基づき,スマートフォンが利用可能な全世界の人々の自律神経系指標を,他のストレスや体調に関係するアンケートとともにオンライン・リアルタイムにクラウド上に収集・解析し,評価結果を各利用者にフィードバックするとともに,世界地図上で匿名化した全員の評価結果を同時に表示・共有するツールを開発することを目的としている. 昨年度ではWindowsサーバー上にクラウドサービスサイトを構築することにより,ユーザーは自分のプラットフォームから映像ファイルをアップロードしクラウド側で解析することが可能となった.これにより,ユーザーは専用のアプリをインストールする必要がないばかりでなく,使用するプラットフォームの種類を選ばない. 本年度では,ユーザーの利便性をさらに向上させるために,映像脈波抽出対象の自動抽出と自動追尾を実現するばかりでなく,肌色抽出した結果と顔検出結果を組み合わせ,顔と掌を自動分離した後,掌に対して楕円フィッティングを行うことによって,顔と手の2か所の解析対象領域抽出の自動化を実現することができた.さらに,目の自動検出による頬と額の2か所の自動抽出も可能となった.これらにより,利便性向上だけでなく,複数箇所の映像脈波の位相差計測が可能となり,血圧に相関する値の自動抽出も可能となった.これらの成果からおおむね順調な研究の進展が見られたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度では,開発したクラウド型映像脈波解析システムの利便性を向上させるために,映像脈波抽出対象領域の自動設定と自動追尾の開発を進めた.昨年までの出力形式では時系列グラフが中心であり,一般ユーザーには直感的な把握ができにくいものであった.そこで今後は,音声読み上げやレーダーチャートを用いた表示や,過去の履歴との自動比較などの新しい出力形式の開発が必要である.また,本システムをAIスピーカーなどに応用するためには,顔識別機能を導入することにより家庭内での複数のユーザーを自動的に識別する必要があるとともに,呼吸統制を使った目標心拍数を提示するようなゲーム的要素の導入など,継続的にサイトを利用したくなるような仕組みを作る必要がある.さらに,出力結果の中でも重要なものが血圧相関値であるが,この値の精度向上と相対値ではないmmHg単位を持つ絶対値を算出するアルゴリズムの開発も図る必要がある.合わせて,映像ファイルとともにその時の体調に関連するアンケートなどの同時アップロードが可能な機能の追加が望まれる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,ユーザーのプラットフォームから映像ファイルをアップロードするためのクラウドサーバーを購入または借用する予定であった.しかし昨年度と同様に,このシステムをWindowsサーバー上で構築するには,仮想サーバーとして普通のパソコンを使用し,クラウドサーバー上でも同様に動作するようなphpスクリプトを開発することで,実際のクラウドサーバーを購入または借用しなくても,動作の検証や機能の確認が可能である.したがって,実運用に至る前の開発段階の物品費に余剰が生じたことが,次年度使用額が生じた理由である. 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については次のとおりである. 前年度と同様に,パソコン上に構築した仮想サーバーにおけるシステムの動作検証を行った後,映像ファイルのアップロードだけではなく,ユーザーの体調を反映するアンケート収集システム・顔識別システム・音声読み上げシステム・呼吸統制に基づく血圧降下システム等を同じサーバー上に構築する費用として使用する.
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