研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肥満を基盤に単純性脂肪肝から発症し,肝硬変,肝癌へ進行する慢性肝疾患である.その発症には,脂肪酸エネルギー代謝異常による肝細胞への脂肪沈着や酸化ストレス負荷に加え,腸内細菌叢異常,内臓脂肪からの炎症シグナルなど,肝に加え全身の多様な因子が関与する.肥満を基盤とする全身病,すなわちメタボリック症候群の一表現型と認識されている.NASHの原因である肥満やメタボリック症候群には,全身の脂肪酸エネルギー代謝バランスの異常が関わっている.生体において脂肪酸はエネルギー源として好気的に代謝される(ミトコンドリアbeta酸化).肝臓では糖新生としてエネルギーの変換が行われ,白色脂肪組織ではエネルギー源として中性脂肪の形で蓄積される.そして褐色脂肪組織は,脂肪酸beta酸化によって熱を産生しエネルギー消費を行い,全身の脂肪酸エネルギー代謝バランスを摂っている.申請者らが作製した“ストレス応答タンパクp62遺伝子欠失マウス”(p62-KO)マウスに60%高脂肪食を摂餌させると脂肪肝は高度の炎症・線維化を伴うNASHを発症した.そのメカニズムとして,p62が肝内の遊離脂肪酸(FFA)エネルギー代謝に関わり,p62遺伝子欠失マウスの肝臓では細胞内のFFAとfatty acyl-CoAの不均衡が生じている可能性が示唆された.その原因としてp62欠失によるlipophagyが関わっていることも推測されている.今後において,肝細胞特異的p62遺伝子レスキューマウスの表現型を比較解析し,脂肪酸エネルギー代謝における白色脂肪組織,褐色脂肪組織との臓器連関を解析しながら,p62とFFA,lipophagyの関連について探求していく予定である.さらに,最新の細胞外フラックスアナライザーを用いて、初代培養細胞(肝,褐色脂肪,白色脂肪)について、p62の脂肪酸酸化における機能を探索し,独自のアプローチによるNASHの発症と進展の病態解明を目指していく.
2: おおむね順調に進展している
p62が肝内の遊離脂肪酸(FFA)エネルギー代謝に関わり,p62-KOマウス肝臓では細胞内のFFAとfatty acyl-CoAの不均衡が生じている可能性を突き止めた.
肝細胞特異的p62レスキューマウスの表現型を比較解析し,脂肪酸エネルギー代謝における白色脂肪組織,褐色脂肪組織との臓器連関を解析しながら,p62とFFA,lipophagyの関連を探求していく予定である.
研究試薬の発注が遅れたこと,海外から輸入になってしまったことより,納品の時期が4月以降になってしまった.納品された研究試薬については,今年度の実験に要する.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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